[HRPニュースファイル259]日銀の追加金融緩和に潜む意図とは?

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日銀が27日の金融政策決定会合で、追加金融緩和を決定しました。

内容としては、長期国債購入基金は、65兆円から70兆円に5兆円積み増しました。また、長期国債の購入は10兆円増やす一方、金融機関に対する低金利貸し出しは5兆円減額となり、差し引き5兆円のお金が増える計算です。

さらに、これまで購入対象としていた国債の残存期間(償還=返済までの残存年数)を2年以下から3年へと拡大するなど、長期の変数に対しても影響を与える効果を発表したことが大きな特徴です。詳細→http://bit.ly/IBf5w5

白川方明日銀総裁も記者会見を行い、金融緩和の強化を強調しました。→要旨はこちら→http://bit.ly/JS6zwm

さて、追加緩和を行った日銀の姿勢はある程度よいとしましょう。問題は、果たしてどこまで本気なのかということです。

市場関係者から見れば、今回の金融緩和はある程度織り込み済みだったようです(週刊エコノミスト4月24日号参照)。

また、日銀の金融政策に対して学者から政治家まで幅広い意見が掲載された「週刊エコノミスト」は大変興味深い内容となっております。

その中でも、日米の「事実上のインフレ目標」を導入した日銀とFRB(米連邦準備制度理事会)について、ドイツ証券シニアエコミストの安達誠司氏の論文は注目に値します。

安達氏は、両者は「似て非なるもの」と言い切ります。

「金融政策の力を信じるFRB」と「及び腰で被害者意識が強い日銀」という表題通り、日銀の追加緩和の「本気度」に疑問を呈しているわけです。

例えば、英訳するにも海外に対して誤解を招いた「目途」という言葉です。

安達氏によれば、FRBのバーナンキ議長は、インフレ2%は「長期的な目標値」であり、2014年まで低金利を継続することをはっきりと言及しているに対して、日銀の白川総裁は「目途」として、達成義務のある「目標」という表現には否定的な見解を示していることを紹介。

さらに、1920年代の大恐慌に対して、金融政策の重要性を強調するFRBと高橋是清が行った日銀の国債直接引きが、後のハイパーインフレにつながったとする見方は対照的です。

言い換えれば、FRBは、デフレ脱却のためには金融緩和は当然行うべき政策であるとするのに対して、日銀は金融緩和を通じたインフレの安定は無理だとしながらも、あえてインフレ政策を導入した弱腰姿勢に問題があるというわけです。

つまり、日銀が金融緩和をやりすぎると、ハイパーインフレとなったとする「被害者意識」とインフレに対する及び腰がある以上、安達氏は日銀の金融緩和は本気ではないというわけです。

こうした歴史認識の違いが、日銀とFRBの金融政策に影響を及ぼしているのは間違いないと思われます。

海外の新聞記者も同じ論調も見てみましょう。

例えば、英フィナンシャル・タイムズ紙のF・ニューマン記者は、日銀の金融政策に関して金融緩和が魔法の解決策でないとしながらも、日銀が積極的な行動をためらうリスクを指摘しています。

一度、緩和を決めたならば、真剣さを示す必要があると結んでいます。英語版→http://on.ft.com/IepXSd 日本語訳→http://bit.ly/KjMRqf

では、翻って真剣さとはなんでしょうか。

普通に考えれば、デフレの脱却と経済成長を実現するまで日銀として最大限金融政策を行うことです。そのためには、金融政策を一層大胆に推進していくことも選択肢の一つです。

幸福実現党が主張する日銀による国債引き受けを実施することも可能です。やる以上は、明確な成果が出るまで行うべきです。

しかしながら、白川総裁は、記者会見の中で「金融緩和が毎月続くというわけではない」ということにも触れています。

さらに、日銀の追加緩和に隠れた本心として、JPモーガン証券のチーフエコノミストの菅野雅明氏は、「意図は明確だ。緩和打ち止め感を出したいということだ」とし、日銀は市場や政治家からの追加緩和圧力を打ち止めたいということを指摘しています。関連記事→http://bit.ly/IlcVos

最後に、今後の見通しについて触れておきましょう。

日銀は物価の見通しを発表しています。実際に、彼らの予想通り1%の目標が達成されたとします。問題は、その時に利上げをするかどうかです。

いわゆる「出口戦略」ですが、日銀の本音は金融緩和を打ち止めして、早期に利上げをしたいという思惑が見え隠れします。

最近10年の歴史を見れば、2000年のゼロ金利解除と2006年の利上げをした実績からみて、日銀が来年から2014年の段階で消費者物価指数上昇を見据えて引き締めに入ることは十分に考えられます。

日銀が金融引き締めを行った後には不況が来ている以上、出口戦略を急ぐことには注意が必要です。

ゆえに、今後は、デフレ脱却から出口戦略を同時にウォッチしていく必要があるでしょう。 (文責・中野雄太)


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