11月1日付の産経新聞に、中国で5年に一度行われる「地方議会選挙」に関して興味深い記事が載っています。
「前回の(地方議会選挙)と比べて急増した、共産党や政府系団体の支援を受けない『独立系候補』が当局から激しい選挙妨害を受け、事前の資格審査で失格していた」という記事です。少し引用しましょう。
「選挙管理当局は1日、北京市各区の議会(8日投票)の候補者名簿を発表したが、立候補の意向を示している独立系候補の名前はそこになかった。
立ち退き問題などで当局と対立する同市の韓頴氏(37)ら13人の市民が9月に『当局の不正をただしたい』として複数の選挙区から立候補を表明し、合同で選挙活動などを行ったが、全員が失格となったという。
また、韓氏と同じように合同で選挙活動を行っている別の14人のグループも全員失格した。人権活動を行っている女性弁護士や、憲法学者の大学教授らの名前も当局の候補者名簿に載っていなかった。
中国の選挙法では、市民10人の推薦があれば、誰でも立候補できる。しかし、当局は独立系候補の推薦人とその家族を呼びつけて降りるよう圧力を加えるほか、記入した書類の筆跡が不明瞭との理由をつけて受け取りを拒否して活動を阻む。
ある女性候補は地元の選挙管理委員会から『(立候補の)届け出用紙がなくなった』といわれて書類を期限までに出せずに失格した。
中国の地方選挙問題の専門家で、『世界と中国研究所』の李凡所長は独立系候補が選挙妨害を受けていることについて『選挙を通じて市民の不満を政治に反映させる貴重な機会なのに、政府がそれを自ら放棄したことは大変残念だ。これでは社会矛盾をますます深刻化させるだけだ』」と語っている。」
―以上、引用―
共産党による「一党独裁」の中国では、当たり前といえば当たり前ですが、選挙においても徹底的に「国民の自由と権利」の剥奪と抑圧が当然のこととして行われていることが、よくわかる記事です。
中国の選挙制度は、県や区といった「地方議会」レベルでは直接選挙が行われます。そして、その上部組織(省、直轄市等)は、下部組織の代表による間接選挙で選ばれ、日本の国会議員にあたる全国人民代表も、省、直轄市の代表によって選出されます。
そうした制度だけ見ると、一見、「民主的」な感じがしますが、記事にあるように、実際に立候補できる人は100%が共産党員か、共産党によって「選ばれた」候補者であり、共産党政府の基本方針から逸脱する主張や思想を持った人は絶対に候補者にはなれません。
このように選挙制度一つを見ても、中国は表向きは普通選挙をうたいながらも、巧妙なシステムと圧政によって、7000万人の「特権階級」(共産党員)が、13億人の人民を支配し、自由と権利を剥奪し、富を独占する実態が浮かび上がって来ます。
中国は時間が経てば「民主化する」という評論家もありますが、実際には、中国という国は、時が経てば経つほど、「専制国家」の度合いを強化しているのが実態です。
中国の情勢に詳しい評論家の黄文雄(こう・ぶんゆう)氏は、中国文化の本質をシンプルに分かりやすく、「詐盗争私汚(さとう・しお)」の五文字で表現されています。
「詐」とはウソ、「盗」とは盗み、「争」とは争い、「私」とは私欲、「汚」とは汚職……。
そうした視点で、中国の様々な事象を観たとき、これまで見えなかった真実が見えてくるのかもしれません。(文責・矢内筆勝)
[HRPニュースファイル079]中国の地方議会選挙の実態――中国共産党の「詐盗争私汚(さとうしお)」
11月 3rd, 2011
本ブログの内容がメールマガジンでも読めます。(※無料です)
本ブログの内容がメールマガジンでも読めます。(※無料です)