政府・民主党が提出した「復興増税案」が迷走しています。
例えば、「政府・民主党は27日に増税以外の財源を2兆円上積みして7兆円とし、増税額を9.2兆円に圧縮する方針で合意したが、28日に政府内から増税圧縮に慎重な発言が出たため混乱。
野田佳彦首相と民主党の輿石東幹事長らが同日急きょ会談し、最終的な増税額は9.2兆円とする方針を確認したが、増税以外の財源を2兆円上積みできる保証はない」(毎日新聞9/29)と報道されています。
要するに、税外収入2兆円の上積みは、あくまでも「目標」であり、実現する保証はないということです。
「税外収入」とは、端的に言えば、増税への批判をかわす為の“煙幕”であり、政府の復興増税を行うために、政府も努力しているところを見せる口実だということです。事業仕分けと同じくパフォーマンスだと言わざるを得ません。
更に問題なのは、その中身です。急きょ盛り込まれた「税外収入2兆円」の中身は、政府保有株式(日本たばこ産業(JT)1.7兆円とエネルギー関連企業7000億円)の売却です。
「エネルギー関連企業」とは、国際石油開発帝石や石油資源開発などで、海外の石油・天然ガスの鉱区を取得し、開発・生産を行い、日本のエネルギー政策の一翼を担っています。
世界的に資源獲得競争が激しくなる中、エネルギー関連会社の株式の売却は、“国家の生命線”となるエネルギー安全保障に大きな損失を与えかねません。
しかも、原子力発電による発電が削減され、石油やガス等の資源確保の必要性が強くなる日本において、エネルギー関連企業の果たす役割は大きくなっています。
特に、来夏までに行われるエネルギー基本計画の見直しに向けて、エネルギー政策の戦略が未確定の中、こうした判断は拙速に過ぎます。
思いつきのパフォーマンスで、国家のエネルギー安全保障の舵取りを簡単に売り渡して良いのでしょうか?
日本のエネルギー自給率は17.6%(原子力を除くと4%)。アメリカ71%、中国93%、ロシア183%、ブラジル92%、オーストラリア233%などと比較すると、非常に低く、原油の輸入依存度も99.86%と世界第4位で、エネルギー安全保障上、非常に脆弱な状況にあります。(IEA2009年統計)
加えて、国連は世界の人口が来月末に70億人を突破することが発表しました。「国連人口基金」東京事務所の池上清子所長は「70億人の世界には世界中の協力がなければ対応できない」と述べ、今後、途上国では食糧や資源の確保がこれまで以上に深刻化する見通しを語っています。(NHK9/28)
食糧と資源エネルギーの枯渇は世界的な課題として迫っており、各国とも国策として官民一体となって食糧や資源獲得に必死に乗り出しています。
このような厳しい世界情勢を前にして、日本は小手先の財源確保のために国益を売り渡して良いのでしょうか。
幸福実現党は、復興財源としては「復興債」を発行し、日銀の直接引き受けにより、迅速かつ大規模な復興支援を行うべきことを提言しています。事実上、必要な財源分のお札を刷るということです。
国債の日銀引き受けのデメリットとして、インフレ懸念を指摘する向きもありますが、深刻なデフレが続く現状においては、絶好のデフレ脱却策ともなります。
復興増税により景気悪化が進めば、税収が減少し、更なる財源不足に陥り、復興事業が困難になることは火を見るより明らかです。
野田首相は、小手先の財源確保ではなく、厳しい国内経済情勢と国際状況を見据えた上で「日本再建」に向けた政策判断をなすべきです。(文責・小川俊介)
[HRPニュースファイル045]小手先の復興増税が、日本を滅ぼす
9月 30th, 2011
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