政府が第3次補正予算をつかって積極的な中小企業対策に乗り出すことを発表しました。
ただ、支援策が低利融資以外には目立った政策がないことが懸念材料です。なぜなら、既に日本ではゼロ金利近傍にあり、これ以上の低利融資には目立った効果は期待できないからです。
また、海外展開する中小企業をどのように支援していくのか。税制上の優遇を取り入れるのかも未定です。
野田首相は、東京都大田区の中小企業を視察した後に支援策を打ち出しました。現場の声を聞いた上での対策なのでしょう。
首相が現場の意見をしっかり聞くということは素晴らしいことです。そして、迅速に政策にまとめていけば問題はありません。しかしながら、問題は中小企業だけに限定しては方向性を誤りかねません。
本質は、マクロ的な問題です。それは、デフレと不況が深刻化していることです。そのため、雇用者の給与は下がり、企業収益も上向く要素が少ないと言えましょう。
また、今年は3月11日の東日本大震災と福島第一原発事故、原発停止問題に見られるように、企業サイドにとっては二重・三重のショックが続きました。消費者の自粛ムードも加わり、中小零細企業の生産ラインは、縮小を余儀なくされたのは事実です。
中小企業にとって、震災以後は円高が続いていることも懸念材料です。首相が視察した東京都大田区は世界の「オオタク」であり、世界経済にとって必須のサプライチェーンでもあります。多くの工場から世界に向けて部品などが輸出されているので、急激な円高は極めて「不都合な真実」であることは事実です。
デフレ、不況、円高が根本的原因であれば、政府がやるべきマクロ政策は財政金融政策です。くれぐれも温暖化対策税や復興増税はご法度です。
今やるべきことは、増税ではなく国債発行による財政出動であり、民間に少しでも資金が回るための金融緩和です。
そして、毎回のごとく主張していますが、即効性のある政策が国債の日銀引受です。デフレギャップの20兆から30兆円程度であれば、インフレになりません。むしろ、急激な円高とデフレを一気に解決することができます。
インフレが怖いならば、消費者物価指数上昇率を3%程度に設定しておけばよいでしょう。いわゆる、インフレ目標値の導入です。
中小企業への低利融資は、ミクロ的な政策としては十分検討に値しますが、対処療法にすぎません。
現在の日本は、デフレ不況という「低温症」なのですから、まずはここからはじめなければなりません。補正予算を小出しにするよりも、国債の日銀引受によって大量の資金を迅速に投入するほうが効果は高くなります。
日本の財政・金融政策の誤りは、政策を小出しにする癖があり、大胆さと迅速さが欠けています。中小企業支援策は大変素晴らしいのですが、やはり根本原因である日本経済への処方箋を出すことが先決です。
政府には、大局的見地から、経済政策を実行して頂きたいと思います。(文責・中野雄太)
9/20[HRPニュースファイル035]中小企業対策
9月 20th, 2011
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