日本経済復活に必要な成長政策 [HRPニュースファイル617]

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筆者は、HRPニュースファイル576でアベノミクスの成長戦略に関して論じました。この小論でも述べた通り、経済学者からは、「成長戦略は政府主導の色彩が強い」という意見を紹介しました。

よって、民間経済を活性化することを目的とするならば、「成長戦略」ではなく「成長政策」と呼ぶべきです。

前者は政府主導で社会主義的、後者は市場の効率性や競争力を高める自由主義的な発想に基づいています(*この議論は片岡剛士著『アベノミクスのゆくえ』が有益な参考文献)。

代表的な成長政策には、公企業の民営化があります。

旧国鉄がJRになり、日本電信電話がNTTとなったことは有名ですし、近年では小泉政権時代に実施した郵政民営化が記憶に新しいところです。

ただし、サービス向上と財政赤字削減に不可欠な政策ですが、いわゆる「抵抗勢力」からの反抗が激しいのも事実です。イギリスのサッチャー元首相が「英国病」克服のためにとった民営化もストやデモなどといった反発に会いました。民営化問題は政治問題に発展しやすい難題です。それでも、JRやNTT、JTなどが民営化によるサービス向上は事実ですので、大いに評価できると言えるでしょう。

次に規制緩和を挙げることができます。

伝統的な規制緩和による競争促進政策は、主に独占や寡占企業がある産業において行われます。ミクロ経済学の一分野として確立されている競争政策ですが、これまで数多くの研究が蓄積されています(参考文献:『規制と競争の経済学』清野一治著)。

食品の安全や環境問題に関する必要な規制は別として、競争を阻害している法律や法令を廃止していくことが典型的な規制緩和です。

例えば、幸福実現党は主に大都市を中心として建築基準法の容積率緩和を通じて子育てやリタイア後のお年寄りにも優しい住環境作りを主張しています(もちろん、日照権や耐震性等の問題、京都などのように歴史建造物が多い場所などでは配慮が必要なのは言うまでもない)。空中権を明確に認めて超高層ビルを駅前か駅ビルに作り、子育てから社会福祉までカバーできる多目的ビルの建築が可能となるという提案です。

こうした規制緩和の経済効果は計測が難しいですが、安価で良質なサービスが実現しているならば政策効果があると考えるべきです。加えて、低所得者層にも恩恵が及ぶことを考慮すれば、規制緩和は決して弱者切り捨て政策ではありません。

そして何よりも今話題となっている成長政策に必要な柱は、TPP参加と原子力発電所の再稼働です。

TPP(環太平洋経済連携協定)への参加は、貿易と投資の自由化を通じた成長が狙いです。関税や輸入割り当てなどの保護主義政策撤廃は、日本国内の効率性を高め、消費者に安価な製品を提供することができます。農業や社会保障関連からは根強い反対が出ているとは言え、消費者を犠牲にした保護政策をいつまでも正当化できません。もし保護したい分野があれば、参加国全員の承認や10年近い交渉時間が与えられるために、有利な条件を引き出すことは十分可能です。

一方、日本は既に世界各国と18の投資協定と10の二国間経済連携協定を結んでいます。また、世界最大の債権国であるので、投資受入国がルールを守ることを義務付けることで日本企業の財産を守ることができます。

経済産業省によるTPPの経済効果は、10年で3兆円程度と極めて小さいものですが、TPPは製造業の空洞化を防ぎ、地元の雇用を守ることができること。日本人の金融資産や知的財産権が保護されるわけです(参考文献『TPPでさらに強くなる日本』原田泰+東京財団著)。

一方、農業分野の損失は1兆円程度としても、補償措置を施すことによって相殺することも可能です。むしろ、国内の非効率性を改革する競争促進政策にもなるので、「強い農業」を作るチャンスにもなります。従って、安倍首相がTPP参加を表明したことは評価できます。今後の課題は別の機会に譲りたいと思います。

最後に、原子力発電の問題です。

幸福実現党は、ニュースファイルで何度も触れたように、早急な脱原発ではなく安全性の確保された原子力発電の再稼働を主張します。今後は、日本版スマートグリットや発送電分離の議論も行われますが、当面は再稼働による電力の安定供給が優先されなければなりません。また、再生可能エネルギーの技術革新による費用低下=電気料金低下の効果も十分あり得ます。現時点では、原発の再稼働との同時進行で安定した電力を供給することが国民の生活と産業を守ることになるのです。

以上、幸福実現党が考える成長政策について概略を述べました。

基本路線は政府の介入を最小限に抑え、民間主導の成長路線をつくることです。加えて、減税路線を加えることで幸福実現党が掲げる「自由からの繁栄モデル」となり、アベノミクスと差別化できます。部分的に重なる点があっても、根本の経済哲学が違うのだとご理解頂ければ幸いです。(文責:静岡県参議院選挙区代表:中野雄太)


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