遠のく原発再稼働――日本の原発技術の流出を防止せよ![HRPニュースファイル606]

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◆厳格化された「新規制基準」

原子力規制委員会は10日、より厳格化された原発再稼働に向けた新規制基準の条文案を取りまとめました。

厳格化された新規制基準に適応するには、地震や津波対策、過酷事故対策を実施する必要があり、国内全50基の原発の内、全基準に即時に適応する原発は少ないと見られています。(4/11 日刊工業新聞)

また、仮に適応したとしても、規制委が同時に審査できるのは3か所の原発のみで、原子炉の安全審査には半年~一年程度かかるると言われており、年内の原発再稼働は困難な見通しです。

更に、新規制基準では、原発から半径160キロ圏内で過去1万年以内に活動暦がある火山の運転期間中の再噴火の可能性の調査するなど、新基準での全原発の審査には、原子力規制委は早くても5年はかかるとの試算を示しています。(4/9産経)

◆非科学的な要素を伴う「活断層調査」

「新規制基準」では、活断層調査について、対象期間をこれまでの約13万年前までから、必要な場合は約40万年前まで遡ると厳格化。(4/10 ANN)

原発の運転期間を原則40年と定めつつ、40万年前まで活断層が無いことを求めることはあまりにも非科学的で、むしろ、活断層が動いても大丈夫なよう安全設備の強度を増す工学的な対応を優先すべきだとの批判が出ています。(4/11 読売社説「原発新規制基準 ゼロリスクにとらわれるな」)

活断層調査には主観が入りやすく、原子力規制委の原発敷地内断層調査の有識者の一人でもある東京大地震研究所の佐藤比呂志教授は3月28日、立川断層の掘削調査で、地下に埋め込まれたコンクリート製とみられる柱状の人工構造物を「断層活動で動いた石」と思い込み、「活断層を確認した」と誤って発表したことを謝罪しています。(3/28 産経)

実際、断層かどうかの判断は専門家でも見解が異なり、首都大学東京の山崎晴雄教授(地震地質学)は、「活断層調査では、はっきりした証拠をもとに断言できるようなことは少ない。研究者それぞれに解釈が違う」と述べています。(3/29読売「活断層調査、信頼性揺らぐ」)

40万年まで遡り断層が発見されなくても、地下構造を詳しく調べて活断層の有無を調査し、「活断層である可能性が高い」と規制委が判断を加えれば、原発再稼動は困難になります。

◆日本の原子力発電技術は世界レベル

このような原子力規制委員会の基準について、米エネルギー省ウィリアム・マーチン元副長官は「日本の基準は、米原子力委員会(NRC)よりも厳しい。費用対効果も考え、国際的な視点も踏まえて検討すべき」と述べ、国際的に突出した水準にすべきではないと述べています。(4/7 読売)

また、日本の最新型原発を3月に視察した英国のジョーンズ・ウェールズ地方担当相も「日本の原発には大変感銘を受けた、福島原発の事故後、その教訓に学んで安全性を高めた日本の新型原発が英国に建設されることに期待する」との声を寄せています。(4/9産経「日本の原発に不安ない」)

世界レベルの技術を持つ日本の原発関連企業は、国内で市場を見出すことは難しく、海外輸出に活路を見出そうとしています。

実際、既にベトナム、リトアニア、フィンランド、トルコなどが中国、韓国、カナダと競合する中で受注、もしくは受注に向けて動いています。

◆日本の原子力技術に触手を伸ばす中国

そうした中、中国が日本の原発関連の技術者に目をつけています。かつてソ連の崩壊直後、中国はソ連の核兵器開発の技術者を自国に引き抜くべく、車や運転手付で破格の謝礼を払いました。

その時と同様、現在、海外勤務を希望する日本の原発技術者が急増しており、中国から日本の原発技術者の引き合いが相次いでいます。(4/8 産経「中韓が狙う日本の原発技術 国内低迷、ノウハウ流出懸念」)

中国の原発事故は日本にも影響が及ぶため、ある程度の技術指導は必要でしょうが、使用済み燃料の再処理技術は、そのまま核兵器にも転用可能なプルトニウムを取り出すことができるため十分な警戒が必要です。

原子力技術の移転は、日本の国防とも深く絡む重要事項です。日本の核技術流出を防ぐためにも、政府は早期に原発稼動の決断をなすべきです。(政務調査会・佐々木勝浩)


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