[HRPニュースファイル349]アメリカはこのまま衰退するのか?――米中板ばさみの中で日本が取るべき道

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「G0(ジーゼロ)」という言葉をご存知でしょうか。

G7とかG8といえば、先進国の首脳が集まり、国際的な問題について討議するサミットのことですが、「G0」は「リーダーシップを取る国がない世界」の状況を表す新しい言葉です。

特に、2008年の金融危機以降、覇権国アメリカの影響力が低下し、国際問題を仲裁する指導力を失ってしまった状態のことを指します。

ユーラシア・グループ会長のイアン・ブレマー氏が、最新の著書で論じているコンセプトですが、著者の意図に関わらず、この「G0」という言葉は「超大国アメリカがもはや落ちぶれてしまった」という印象を与えかねません。

しかし、アメリカは本当にこのまま衰退していくのでしょうか?

そもそも、「アメリカ衰退論」というのは、ベトナム戦争のときなど、実はこれまで何度も現われてきた論調なのです。しかし、アメリカは何度も力を盛り返してきました。

「G0」論の張本人である、ユーラシア・グループ会長のイアン・ブレマー氏も、アメリカは国内問題の解決に集中することで、再び国際的なリーダーシップを回復する可能性があるとしています。

また、アメリカが落ち目だと言えば、まるで今度は中国が世界一になったようにも聞こえますが、それはまだ将来の可能性に過ぎません。

GDPでは2016年にも中国がアメリカを抜くという試算もありますが、中国の人口はアメリカの約5倍で、国民の豊かさには大きな差があります。

軍事の面でも、中国は「2050年までに近代的な戦争で勝利できるようにする」という目標を立てていますが、裏を返せば、「アメリカと互角に戦えるようになるのはまだ先の話」という意味になります(中国の軍拡の脅威を軽視するわけではありませんが)。

衰退論とは裏腹に、アメリカ経済復活の芽も見えてきています。

近年の採掘技術の発達で、アメリカは天然ガスや石油を徐々に自前で調達できるようになってきており、2023年にはエネルギー自給を達成できるとする議論もあります。もし資源の輸入を減らせるなら、貿易収支の改善に大きく貢献することになるでしょう。

また、欧州危機などで依然として景気後退のリスクは残りますが、海外での建築物の設計などサービス産業による「輸出」も増えており、先進国らしい高付加価値の産業に基づく経済回復の可能性も現実味を帯びてきています。

以上のことから言えるのは、アメリカはまだ当分は世界一の国であり続けるということであり、「アメリカ衰退論」を信じ込みすぎると間違った判断をしかねないということです。

特に「斜陽のアメリカではなく、勢いのある中国につこう」という論調には気をつけなければなりません。

「アメリカは帝国主義国」と決めつけ、日米安保を否定する左翼的な論調が冷戦期にありましたが、それは今日のアメリカ衰退論に受け継がれています。

「『テロとの戦い』という帝国主義戦争で国力が疲弊し、金融危機で資本主義の矛盾が露呈した」と解釈すれば、「アメリカ衰退」はマルクス主義的なレトリックになるのです。

「アメリカと中国とどちらにつくか」という議論は、日本国内で今後さらに激しくなっていくかもしれません。

そこで考えなければならないのは「我が国が守るべきものとは何か」ということです。

アメリカも、他の国と同じように自国の国益に基づいた外交政策を取りますが、それでも「世界の民主主義を後押しする」という国民に対する建前があります。

しかし、現在の中国にはその建前すらなく、「政権の維持」が政府の第一目的になっています。アメリカよりも中国に接近するというなら、様々な内政干渉を覚悟しなければなりません。

南京事件を根拠に不当な反日感情を煽っているところを見れば、中国に「日本を服従させたい」という思いがあるのは明らかです。

現在でも、北京政府と親密な政治家が日本にいますが、こうしたチャンネルを使って日本の国策を誘導しようとする工作はさらに活発化するかもしれません。

つまり、「日中同盟」が仮に成立するなら、「日米同盟」よりも我が国の独立を危機にさらす恐れが高いものになると言えます。

「不平等な日米同盟から脱却すべき」という声もありますが、それなら現実的な代替策を示さねばなりません。

もし、「対等な日米同盟」というものを真剣に望むのなら、気骨ある明治の政治家たちが不平等条約の改正に取り組んだのと同じ精神で臨むことです。

つまり、国力を増強してより対等な立場で交渉するというのが本来の筋なのです。あるいは、防衛力をつけ、米軍が日本の防衛において担っている役割を引き継げるようにすることです。

それが安全保障を考える責任ある立場であり、米軍の活動や日米同盟に何でも反対するだけでは、防衛体制に空白を作り、我が国の安全を脅かすだけに終わることになります。

隣国の数字だけの経済成長にごまかされ、我が国の独立を脅かすような道を選んではなりません。

責任ある防衛体制の構築と、より強固な日米同盟の推進――これこそが、我が国の独立とアジアの平和を守るための解であると、私たち幸福実現党は考えます。(文責・呉亮錫)


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