◆希望者を65歳まで雇用するよう義務づける「改正高年齢者雇用安定法」施行
本年4月1日より、希望する社員を65歳まで雇用することを企業に義務付ける「改正高年齢者雇用安定法」が施行されました。
2006年4月に施行された「改正高年齢者雇用安定法」は、65歳まで働ける制度を導入するように促すもので、労使協定や就業規則等で定めた基準に合わなければ、希望者であっても再雇用されないこともありました。
今回の改正法では、企業は雇用する社員を選別することはできなくなり、「60歳以降も働きたい」と希望する社員は、原則65歳まで働くことができるようになります(2025年までは経過措置あり)。
ただ、それぞれの事情を考慮することなく、各企業に高齢者雇用を義務付けることは歪みを生みます。
みずほ総合研究所の試算によれば、事実上の定年が65歳になる2025年度には、企業全体で年間の人件費は1.9兆円、約1%程度増加するとのことです。
この数値をベースに計算すると、各産業の利益率を0.1ポイント押し下げるとの試算も出ています。(3/4 日経ビジネス)
しかし、ドラッカーが述べているように「知識労働者をコストではなく資産として遇すること」によって、生産性を高め、人件費増加を補って余りあるだけの利益を上げる道はあります。
実際、多くの企業は高齢者の智慧と経験を活かそうと、様々な工夫を凝らしています。
◆消費増税を中止し、景気回復を優先せよ!
ただ、企業が雇用を維持・増加しようとする前提として、景気の回復と経済成長が必要です。
その足を引っ張るのが消費増税です。消費増税で景気が悪くなって倒産が増えれば雇用も減ります。
1997年に消費税が3%から5%に引き上げられた際には、それまで3%台だった失業率が、その翌年の98年には4.11%に上がりました。その後も少しずつ上昇し、2001年には5%台になりました。
経済成長の足かせとなる消費増税を阻止し、新産業への投資を行って若い世代に魅力的な職場を与えると共に、高齢者も貴重な戦力とされるような環境作りを急がねばなりません。
◆労働市場の流動化を進め、「チャンスの平等」を実現せよ!
その上で、長期的には、労働市場の流動化を進めることが重要です。
この度の法改正は、一律に65歳まで雇用し続けることを義務化するものですが、業種によっては高齢者に向かない仕事もあります。
例えば、住宅建材等の運送を手掛けるアルプス運輸建設では、体力や判断力が衰える高齢者にトラックの運転をし続けてもらうことはリスクがあると判断し、新規事業として農業を始め、高齢社員に稲作に従事してもらうことにしています(3/4 日経ビジネス)。
ただ、これは全ての企業ができることではありません。
現在の日本では、正規社員の解雇についての規制が非正規社員に比べて強すぎるため、一度職を失った人、これから社会に出る若者にとって不利な状況が生まれています。
今後、65歳までの雇用が義務付けられるようになれば、ますます正規雇用を控える企業が増えるでしょう。
雇用に関する規制を緩和して労働市場の流動化を進め、転職をしやすくする環境をつくることで、長期的にはチャンスの平等が生まれます。
転職が当然の社会になれば、各自の年齢や経験、体力や技能に応じた職場への道も開けるでしょう。
ドイツでは、一度採用したら解雇はほとんど無理と言われるほど厳しい規制がありましたが、法律を改め、解雇をしやすくしたところ、短期的には失業者が500万人を超えましたが、長期的には雇用の流動性が高まり、企業の活力も高まって失業者が減りました。(2011/8 WEDGE http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1422?page=1)
◆高齢者雇用のパイを増やせ!
さらには、高齢者雇用のパイをいかに増やしていくかを考えるべきです。
介護人材派遣業を営む㈱かい援隊本部は「介護分野の人手不足の問題を元気な高齢者を雇用することで克服したい」という志でスタートしたベンチャー企業です。
このような高齢者雇用を積極的に推し進めようとする企業や、高齢者による起業に対して、投資や税制優遇などの支援を行うことも必要です。
◆「生涯現役社会」に向けたマインド転換を!
最後には社会全体のマインド転換が必要です。
幸福実現党は「セルフヘルプの精神」に基づいて、老後の生活を政府に依存するのではなく、個人や民間企業の力、家族の助け合いで生計を立てることができる、充実した「生涯現役社会」を目指しています。
その具体的政策として「75歳定年制」を提唱しています。
戦後長らく55~60歳定年が常識だったため、75歳は突拍子もなく聞こえるかもしれませんが、55歳定年が一般的だった1951年に男性60.8歳、女性64.9歳だった平均寿命は、50年間で男性18年、女性20年も伸び、男性78歳、女性84.9歳となりました。
余命を考えれば、「75歳定年」はむしろ自然の流れだと言えるでしょう。(文責・政務調査会部長代理 小川 佳世子)
「生涯現役社会」に向け、規制緩和と減税でパイを増やす発想を![HRPニュースファイル596]
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円安による「悪いインフレ」に陥らないためには消費増税を中止せよ![HRPニュースファイル595]
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◆円安で「値上げの春」到来
円安による原材料の輸入価格上昇などを受け、4月1日から電気料金、食用油など生活に密着したものの値上げが相次いでいます。
平均的な世帯のモデルでは、月あたりで東京電力が131円アップ。東京ガスが102円の値上がりとなります。
サラダ油、キャノーラ油などの食用油は、家庭用で1キログラムあたり30円以上の値上がりに。ツナ缶、小麦の値上がりも、円安による原材料費高騰が要因です。
トイレットペーパーやティッシュは、大手製紙会社の出荷価格が約15%上昇。自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の保険料も2890円アップします。(3/30 夕刊フジ「『値上げの春』到来 円安で電気、ガス、食用油が値上げ」)
クリーニングには欠かせない溶剤などの石油製品が値上がりしたため、全国でクリーニング代の値上げも相次いでいます。
ガソリン価格は、現在は横ばいが続いていますが12週間連続で上がりました。このように製造業は円安によるコスト上昇に直面しています。
コスト上昇による値上げは「コストプッシュ型インフレ」と呼ばれ好ましくない「悪いインフレ」として分類されます。
特に日本は、原油、天然ガス、鉄鉱石、銅、小麦などの必需品の大半を輸入に頼っており、円安になると「コストプッシュ型インフレ」に直結しやすい環境にあります。
◆円安は景気回復をもたらすか?
日本のマスコミの多くは「円安になれば日本経済は復活する」と評しています。
確かに、円安効果で日本の輸出企業に急速に注文が増えており、輸出企業が活力を取り戻しつつあります。
実際、輸出企業の時価総額はトヨタ自動車が16兆9296億円と昨年11月14日(野田前首相による衆院解散表明時点)に比べて6兆円以上も増加。
東京証券取引所の第1部に上場し、時価総額が1兆円を突破している企業の数が、昨年11月14日から4カ月で約1.5倍に急増しています。(3/26 産経「時価総額1兆円突破企業が4カ月で1.5倍に アベノミクス効果」)
しかし、円安による景気回復効果は業種によって大きな差が見られます。
みずほ総合研究所の試算によると、2012年平均の円ドルレート79.8円が10%円安になった場合、「輸送機械」「電気機械」「一般機会」の三業種は大幅に利益が上昇するものの、輸入コスト増によって「石油製品」「飲食料品」「建設」等は利益が減少します。(4/6 週刊ダイヤモンド)
◆円安が「良いインフレ」をもたらすためには?
円安が日本経済全体の景気回復をもたらすためには、輸出企業の利益が設備投資や賃金上昇・消費拡大を通じて波及することが不可欠です。
同研究所のシニアエコノミストの前川亜由美氏は円安が景気回復に繋がるかは「(円安のメリットが)雇用の6~7割を占めている非製造業の中小企業に波及するかどうか」が鍵だと述べています。(同上)
第一生命経済研究所副主任エコノミストの鈴木将之氏は「まずは外需が引っ張る形で、それが内需に波及し、消費で後押しするという回転が起きるか否か」だと語っています。(同上)
すなわち、円安→輸出企業の利益増大→賃金上昇→投資・消費拡大→景気回復という「良いインフレ」の好循環に入るか、円安→輸入コストの増大→消費者・非製造業・中小企業の負担増、賃金は上がらず、という「悪いインフレ」に陥るかの分岐点にあるのです。
◆「悪いインフレ」を避けるためには、消費増税を中止せよ!
1997年の消費増税が「消費不況」をもたらしたように、来年2014年4月と2015年10月に予定されている消費税増税は、消費拡大・投資拡大の循環を断ち切る最大の障害となります。
実際、大和総研の試算によれば、消費税増税がなされれば、毎年3%ずつ賃金が上がっていかなければ、実質可処分所得が目減りします。(2/25 日経ビジネス)
同研究所の試算によれば、年収500万円の世帯の場合、2012年の実質可処分所得は423万円だったのが、消費税増税等により、2016年の実質可処分所得は391万円と32万円も減少し、3%以上の賃金上昇が無ければ、実質所得が減少する計算になります。(同上)
このまま消費税増税がなされれば、実質賃金上昇→消費拡大という好循環、「良いインフレ」が実現することは極めて困難になります。
幸福実現党の大川隆法総裁は3月17日、山口支部での法話『時代を変える信念の力』において、「2%程度の物価上昇で、消費税を上げたら、景気はすぐ落ちてしまいます。日本経済はマイナス成長に変わります。」と述べています。
「悪いインフレ」の増長を阻止し、「良いインフレ」を実現するべく、幸福実現党は参議院選において、「消費税増税の中止」を訴え、戦って参ります。(文責・加納有輝彦)
今こそ政府・日銀はメガバンク通貨の発行を検討せよ![HRPニュースファイル594]
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「『メガバンクも30兆円ぐらいまでなら1万円札を出してもよい』ということにすれば、一年で景気は回復します」―――。(大川隆法著『日本の繁栄は絶対に揺るがない』幸福の科学出版)
幸福実現党・大川隆法総裁はリーマンショック直後から、不況撃退策として大胆な金融緩和、さらにメガバンクによる通貨発行を提言しています。
現在、日本の金融政策が世界的な注目を集めていますが、メガバンク通貨の発行を唱えているのは幸福実現党のみです。そこで、「なぜメガバンク通貨なのか」を考えたいと思います。
◆「緩和に次ぐ、緩和」が世界の潮流
昨年末の衆院解散から日経平均株価は43%上昇し(参照3/30日経朝刊)、株式市場から景気回復の兆しを見ることができます。
一方、工業生産や失業率、インフレ率など実体経済の動向を表す指標の改善は遠く(参照3/30産経)、一般国民の懐具合が実感を持って良くなる段階はまだ先です。
アメリカでは早くからの「大胆な金融緩和」が功を奏し、NYダウ平均株価は最高値を更新し続けていますが、やはり実体経済を表す指標の改善は遅れています。
バーナンキ連邦制度準備理事会(FRB)議長は「失業率が6.5%に低下するまで資産を無制限に購入する」と表明しておりますが、これは「たとえインフレ率が目標とする2%を超えたとしても、失業率の改善が思わしくなければ、さらに緩和を続ける」というメッセージです。
現カナダ中央銀行総裁であり、次期イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏は、インフレ目標に代わって、名目GDP目標政策を提言し、議論の的になっております。
名目GDP成長率=インフレ率+実質GDP成長率なので、「中央銀行はインフレ率だけでなく、実質GDP、すなわち企業や国民の実際の経済状況にまで責任の範囲を広げるべきだ」という主張が背景にあります。
緩和に次ぐ、緩和――これが世界の潮流であり、中央銀行の責任と権限は拡大に向かっています。
◆金融緩和の仕組みと限界
ところで、金融緩和はどのような仕組みで行われるのでしょうか。
企業が銀行に預金口座を持つように、民間の金融機関は中央銀行に口座(日銀当座預金)を持っております。
通常の金融緩和では、中央銀行が新しく発行したお金で民間の金融機関から短期国債を購入し、金融機関の預金口座にお金が振り込まれます。
日銀は金融機関の日銀当座預金を潤沢にし、金融機関の資金繰りを助けることで「銀行システム」を安定化させます。
ところが、実際に雇用を増やしたり、従業員に賃金を支払ったりするのは、「銀行システム」の先にある企業です。
中央銀行は「銀行システム」を安定化させることはできても、企業の資金繰りを直接、助けることはできません。
現在、日本やアメリカなどが直面している問題は、最大の資金供給源である中央銀行と一般経済との間に直接的な資金供給ルートがないということに起因しています。(参照:竹森俊平著「アベノミクスの本質を読み解く」,『Voice』3月号)
◆政府・日銀はメガバンク通貨を検討せよ
そこでバーナンキFRB議長がやってきたことは、短期国債の購入を通じた資金供給を超え、住宅抵当証券(MBS)など値下がりが予想されるリスク資産を直接購入するということです。
中央銀行による民間リスク資産の購入は、リスク資産の価格を維持させつつ、一般企業への直接的な資金供給ルートを開きます。
日本でも日銀新体制の下、企業の社債や手形、株、上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)などの民間のリスク資産を買い増していく方向で調整が進んでおります。(3/30読売朝刊)
ところが日本はアメリカと異なり、「証券市場の未発達」という問題を抱えております。
2%のインフレ目標達成のためには、100兆円以上の資金投入が必要だとの分析がありますが、それに対して、例えば日本のREITの市場規模は7兆円程度、東証一部の時価総額でさえ300兆円程度です。
日銀がデフレ脱却のために、100兆円を超えるリスク資産を購入し続けた場合、日銀が日本の主要企業の筆頭株主になるという事態も生じかねません。
ありとあらゆる手段を用いた金融緩和は景気回復のために不可欠ですが、それは日本企業の国有化政策、特定資産の価格支持政策、社会主義政策としての側面を持っていることも否めません。(参照:大川隆法著『政治の理想について』第4章,幸福の科学出版)
だからこそ、政府・日銀は幸福実現党が提唱しているメガバンク通貨の発行を検討すべきです。
メガバンクに一定の通貨発行枠が与えられれば、自由市場の機能を損なうことなく、「銀行システム」の先にある企業への資金供給を活発化させることができます。
メガバンクによる通貨発行は決して奇異なことではありません。私たちは銀行に預金しますが、その預金は全て金庫にしまわれるのではなく、投融資に使われます。
すでに預金・貸出業務を通じて民間銀行は新しくお金を創りだす機能を持っており、メガバンク通貨の発行は、銀行の投融資能力を格段に高める効果を持ちます。
世界に拠点を持つ三大メガバンクの投融資能力の向上は世界経済を牽引し、日本をリーダー国家へと導いていく力になります。(HS政経塾2期生川辺賢一)
北朝鮮「南北は戦時状況に入った」と特別声明――北朝鮮のミサイルに備えよ![HRPニュースファイル593]
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朝鮮半島においては、第2次朝鮮戦争勃発の危機が日増しに高まっています。それについては、HRPニュースファイル587及び591で指摘して来ました。
朝鮮半島有事を見据えた政府の対応が遅れる中、現在、幸福実現党の候補者が全国各地で声を嗄らして、「日本は朝鮮半島有事に備えよ!」と訴えています。
◆北朝鮮が「韓国と戦争状態に突入」、日本の米軍基地も照準に
今回は、朝鮮半島情勢の新たな情報を加えて整理し、今後の北朝鮮の動向を予測、日本の対応のあり方について述べます。
26日に北朝鮮は「反米全面対決の最終段階に突入する」と発表し、戦略ロケット軍部隊と長距離砲兵部隊を含むすべての野戦砲兵軍集団を「1号戦闘勤務態勢」に突入させると声明。(3/27産経「北、米本土の基地打撃」)
「1号戦闘勤務態勢」とは、「先制攻撃の意志であり全面的攻撃の予告」で、「(米軍基地のある)横須賀、三沢、沖縄、グアムはもちろん、米本土もわれわれの射撃圏内にある」と述べています。(3/31 時事「『1号戦闘態勢』は全面攻撃予告=横須賀、三沢、沖縄も射程内―北朝鮮機関紙」)
更に、最新の情報として30日、北朝鮮は韓国と「戦争状態」に突入するとの特別声明を発表。「今後、北南関係は戦争状態に突入、韓国の間のすべての問題は戦時に準じて処理される」と警告しています。(3/30 ロイター「北朝鮮が特別声明、『韓国と戦争状態に突入』=KCNA」)
◆北朝鮮の軍事行動分析
北朝鮮軍部の実際の動きとしては、朝鮮中央通信によると、25日には金正恩書記が日本海側の江原道・元山一帯で多数の多連装ロケット砲や牽引砲を投入した陸海軍による上陸・対上陸訓練を視察。
また、韓国軍消息筋の話として北朝鮮北西部・東倉里(トンチャンリ)のミサイル発射場で、26日車両の動きが活発化。「長距離ミサイル用と推定されるロケットエンジンの性能試験を行う準備とみられる」と分析しています。(3/29 読売)
米国メディアは29日、朝鮮人民軍の作戦会議室とされる写真の背景に「米本土攻撃計画」とされる図があり、米国の地図と重ねると首都ワシントン、テキサス州のオースティン付近を狙っているように見えると報じています。(3/30 産経)
◆圧倒的軍事力で北朝鮮を封じる米軍
そうした北の挑発に対し、米国は3月から4月末まで行われる米韓軍事演習「フォール・イーグル」にイージス駆逐艦2隻、F-22ステルス戦闘機、核兵器搭載可能なB-52爆撃機、原子力潜水艦「シャイアン(USS Cheyenne, SSN-773)」を参加させています。(3/22 読売)
加えて米軍は第5艦隊の原子力空母ジョン・C・ステニカが中東海域から任務を終え、帰還途中にアジア太平洋海域で第7艦隊の作戦に合流させ横須賀基地を母港とするジョージ・ワシントンと2隻の空母打撃群による「戦闘即応態勢」を展開しています。(3/31 産経「北『南北は戦時状況』」)
このように米国が核兵器搭載可能な爆撃機、原子力潜水艦に空母2隻を東南アジアに集結させていることは、かつてなかった圧倒的な軍事力を投入し、北朝鮮の暴発を抑止することを企図したものと思われます。
日米軍事筋は29日、「長距離ミサイル発射の準備とみられる動きは確認されていない」と分析。また同日には、北朝鮮がミグ21戦闘機1機を朝鮮半島西部の南北軍事境界線近くまで南下させましたが、韓国空軍戦闘機が緊急発進すると引き返すという事態も起きています。(3/29産経)
◆今後の北朝鮮の動向に注視せよ
北朝鮮は核兵器開発に走った中国もそうであったように、通常兵力にかける費用、資源をすべて核ミサイル開発に投入しています。
そして、通常兵力開発の労力を核搭載の中距離・長距離ミサイル開発に全面投入すれば、米国をも威嚇できると考えているのです。
2007年に実戦配備された「ムスダン」(射程2500~4000キロ)や12年の軍事パレードで登場した新型大陸間弾道ミサイルとみられる「KN-08」の発射実験はこれから行われること推測され、危機はこれからも続くことは間違いありません。
ミサイルの発射時期は、米韓軍事演習が終わった4月末以降から7月27日の北朝鮮が戦勝記念日とする休戦協定が署名された日の前後で米軍が手薄になった時が危ないと予想されます。
また、北朝鮮の核ミサイル開発で注視すべきは、液体燃料から固体燃料への転換が可能となった場合、準備から発射までの時間が短縮されるため、日米韓が警戒態勢に入る前にミサイルが飛んでくる危険が高まります。
現在の迎撃ミサイルでは対応できなくなることは目に見えており、その対応策としてミサイル防衛、迎撃ミサイルの進化を早急に進めると同時に、日本はアジアの平和を維持すべく、自主防衛を強化すると共に、米国との協力体制の構築を早急に進めるべきです。(文責・政務調査会 佐々木勝浩)
「防衛計画の大綱」を見直し、日本版トランスフォーメーションを構築せよ![HRPニュースファイル592]
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◆迅速さを欠く「防衛計画の大綱」見直し作業
政府は1月25日の閣議で、民主党政権下で策定された防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」の見直しと、人員や装備品などの整備計画「中期防衛力整備計画」の廃止を決定しました。(1/25 産経「民主政権下の防衛大綱見直し 中期防衛力整備計画廃止を決定」)
これを受けて、小野寺防衛大臣は省内に検討委員会を設けて具体的検討を進め、参院選前の6月に中間報告を公表し、年内の大綱改定を目指す予定です。
更に民主党政権下における「動的防衛力」の概念について、小野寺防衛大臣は計画を根本概念から再検討していく考えを示しています。
民主党政権が作成した大綱は問題があり、見直し自体は歓迎しますが、見直しのスピードは迅速さを欠いていると言わざるを得ません。
自民党は下野した期間が三年以上あったにもかかわらず、なぜ改正に一年もの時間がかかるのでしょうか。
2012年から2013年にかけての安全保障環境は非常に緊迫したものがあり、この間、なぜ自民党は政権奪回を見据えて、改定準備作業を進めてこなかったのでしょうか。
今回の記事では、現行の大綱にはどのような問題があるのか、そして、どう改めるべきかについて提言したいと思います。
◆「防衛計画の大綱」の問題点
民主党政権下において策定された「防衛計画の大綱」(http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/2011/taikou.html)の問題点として、以下の3点が挙げられます。
(1)戦略性の欠如
そもそも日本の国益はどこにあるのか、日本の国益を守るために軍事力をどのように使うのか、安全保障政策をどのようにマネジメントするのか、ということについて考えが不足しています。
民主党政権下における数々の外交的失策や中国の軍事的行動と領空・領海侵犯を招いたこと自体、その事実を裏付けています。
(2)「動的防衛力」の概念を政策的に突き詰め、実行することができなかったこと、
「動的防衛力」の概念については、現行の大綱には「軍事科学技術の飛躍的な発展に伴い、兆候が表れてから各種事態が発生するまでの時間が短縮されていることから、事態に迅速かつシームレスに対応するためには、即応性を始めとする総合的な部隊運用能力が重要性を増してきている」とあります。
しかし、民主党政権が行ってきた南西諸島を巡る防衛を振り返ると、とても「即応性を始めとする総合的な部隊運用能力」が向上しているとは言い難いものがあります。
1982年の英国とアルゼンチンのフォークランド紛争の事例でも分かるように、有事における「時間」と「距離」を克服することができなければ、甚大な損害を受けることは避けられません。
(3)新たな安全保障上の脅威への対応の欠如
現行の大綱には、新たな安全保障上の脅威である「宇宙空間の防衛」や「サイバー空間の防衛」について、「情報収集及び情報通信機能の強化等の観点から、宇宙の開発及び利用を推進する。また、サイバー空間の安定利用のため、サイバー攻撃への対処態勢及び対応能力を総合的に強化する」と明記されています。
しかし、早期警戒衛星や偵察衛星などの開発は低調に推移し、サイバー空間を防衛するための実戦部隊の創設については民主党政権下では遂に行われることはありませんでした。
◆新しい「防衛計画の大綱」の提案
そもそも、安全保障戦略とは「国益」を達成するために、いかに軍事力を使うのかという計画と、国の資源をどのように使うのかという計画、それを実行する手順そのものです。
また、安全保障戦略は外交・対外政策と密接な関わりを持っています。すなわち、安全保障戦略は外交・対外政策の延長線上にあります。
例えば、中国・北朝鮮の脅威に立ち向かうために、どの国と結ぶのかを定めておく必要があります。
日本の場合は、中国の脅威に対応するためにロシアとの協商関係を構築したり、北朝鮮の脅威に対応するために韓国と結ぶなど、臨機応変に対処する必要があります。
具体的には、ロシアと結ぶことによって、北方シフトから南西諸島へのシフトを円滑に行い、南西諸島への侵略に対する備えを万全にすべきです。
更には、米軍海兵隊のような「即応兵力」を創設し、侵略行為を即座に叩き潰す体制を確保すべきですし、そのためには、自衛隊組織を改革し、必要な装備を整える必要があります。
新しい安全保障上の脅威については、幸福実現党が従来主張してきたとおり、早期警戒衛星や偵察衛星の生産と配備を進め、サイバー戦の実戦部隊を早急に創設すべきです。
そのためにも、具体的な安全保障政策の実施要領である「防衛計画の大綱」を早急に見直すべきです。(文責・黒川白雲)
北朝鮮でミサイル発射の動き――高まる朝鮮有事に日本はどう対処すべきか?[HRPニュースファイル591]
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◆北朝鮮でミサイル発射の動き
北朝鮮は3月11日、朝鮮戦争の休戦協定を破棄すると宣言し、北朝鮮とアメリカ・韓国との摩擦は米韓軍事演習を境に急激に緊張度を増しています。
更に3月29日、北朝鮮でミサイル発射の動きが強まっていると報道されています。
金正恩書記は29日、米本土と太平洋および韓国の米軍基地を標的として、ロケットを発射待機状態にする計画を承認し、「現在の状況に照らして、米帝国主義者との間で決着をつけるべき時が来た」との判断を示しました。(3/29 CNN「金第1書記、ロケット部隊に発射待機を指示 米軍基地など標的に」)
そして韓国の聯合ニュースは29日、韓国軍消息筋の話として、北朝鮮の中長距離ミサイル部隊で、車両と人員の動きが激しくなっており、「実際に発射される可能性がある」としています。(3/29 読売「北ミサイル部隊・発射場、激しい動き…韓国報道」)
◆北朝鮮のねらいは?
これまでアメリカは何度か六カ国協議で北朝鮮の核開発を阻止する交渉を行ってきました。しかしエネルギー支援や食料支援を受けながら北朝鮮は核開発を止めることはありませんでした。
今回、武力行使のカードをちらつかせることとをみれば、北朝鮮にどんな核廃絶へ向けた支援行ってもムダであることは明らかです。
なぜなら北朝鮮は、大量の餓死者が出ても核兵器開発に邁進して来た中国をモデルとして自らも核保有国を目指して核ミサイルを開発して来たからです。自国民が餓死しようが支援された食料やエネルギーは「金体制」を維持する軍に流れるだけです。
かつての中国の核実験を核弾頭を小型化できる濃縮ウランを開発当初から優先して行いました。北朝鮮の3回目の核実験も濃縮ウラン型であったことを考えると、小型化した核弾頭を搭載したミサイルの開発の見通しが立ったことは間違いありません。その自信が現在の北朝鮮の強行姿勢を支えています。
シナリオは二つ。現在進めているミサイルを発射訓練として実施し、韓国とアメリカに対して小型化した核弾頭を搭載すればいつでも韓国も、日本の米軍基地も火の海にできるぞと実際の威嚇をかけるというものです。
かつて中国の中国も核弾頭開発時点では、核実験とミサイル発射実験を交互に行ってきました。
しかしもう一つのシナリオとして最悪の場合、追いつめられた北朝鮮の最高指導部が最終的にソウルを狙う、日本の米軍基地を狙う最後の行動にでる可能性も否定はできません。それが北朝鮮の怖いところです。
これに対し、米韓は軍事演習を通じて戦争遂行能力を再点検すると共に、演習に参加した原子力潜水艦を朝鮮半島周辺に留め、戦略爆撃機を演習に参加するなど、事態の変化に対する準備を整えてきました。(参考:[HRPニュースファイル587]第2次朝鮮戦争勃発の危機―米韓軍事演習と備えが不十分な日本⇒http://www.hr-party.jp/new/2013/36251.html)
◆朝鮮半島有事に備えよ!
戦後間もない朝鮮動乱の際には、北朝鮮に日本を射程圏内に収めるミサイルは存在しなかったため、日本への飛び火はありませんでした。
しかし、今度、第二次朝鮮戦争が勃発した場合、北朝鮮から日本の米軍基地などにミサイルが飛んでくる可能性もあります。
ところが、朝鮮半島の隣に位置する日本は、そのような脅威が身近に迫っていることなど考えようともせずに、ただ無為に時間を過ごしています。
本来であれば、日本も朝鮮戦争が再び開戦した場合にどのように振る舞い、自国を防衛するのかという一連の計画を定め、行動しなければなりません。
アメリカは上記のような朝鮮戦争の再開戦を想定しているにもかかわらず、日本は朝鮮半島の再開戦は全く想定外であり、韓国在住の邦人脱出計画は言うに及ばず、再開した朝鮮戦争に日本が巻き込まれた場合の日本国防の行動計画すらないのが現状です。
日本は安全保障政策をどう遂行するのか。「最悪の状態」である朝鮮戦争が再び始まる可能性があるということを念頭に入れて早急に国防策を準備する必要があります。
日本政府、朝鮮戦争が始まった場合、どのような状況になるかシミュレートし、必要な計画を立てておき、装備や物資等を整えるべきです。
日本は早急にアメリカや韓国とも連携を固めた上で、「自分の国は自分で守る」という気概を持ち、行動しなくてはならない時が来ています。(文責・佐々木勝浩)
もう「引き締め」はこりごり。ユーロは「成長路線」に転換を!――キプロス金融危機から学ぶべき「緊縮路線」の限界[HRPニュースファイル590]
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◆キプロスから再燃するユーロ金融危機
キプロスでは、ユーロ圏諸国から金融支援を受けるために、キプロス国内の2大銀行(キプロス銀行とライキ銀行)を再編することになりました。
10万ユーロ以下の預金は保護されますが、両行の大口預金者が負担強制することを条件に、EUから100億ユーロ(約1兆2300億円)の金融支援を受け、当面は、財政破綻を回避できる見通しです。(3/25 朝日「キプロス、支援合意主要2行を再編へ」)
今回のキプロスのケースは、今までのヨーロッパ内の支援策とは大きく異なる点があります。
それは、「銀行の大口預金者」と「債券保有者」が損失を被ることです。
今まで財政危機が起きたギリシャやアイルランド、ポルトガル、スペインに対しては、債券保有者や預金者に負担を強いることは、ユーロ圏の銀行からの資金逃避(キャピタルフライト)を招く懸念があり、実施されませんでした。
「資金逃避」とは、国内から海外へ資本が一斉に流出することです。
これにより、国債の買い手が急激につかなくなることによる政府の資金繰りの悪化、銀行預金の大幅な減少に伴う融資の引き締めなどを通じて、経済活動の縮小を引き起こします。
今回のキプロス支援をめぐる一連の動きにより、「銀行の資金調達コストの上昇や、預金移転の活発化、増配の後ずれにつながる可能性がある」という指摘もあり、安全な銀行を求めて、預金がキプロス国外へ流動化する可能性があります。(3/27 ロイター「キプロス支援策で欧州銀に激変も、資金逃避の懸念」)
なぜなら、株主・債券保有者・預金保険対象外の預金者が損失を負うリスクへの不安が、財政懸念のあるスペインやイタリアにも不安が広がることが予想されるからです。
キプロスでは銀行の取り付け騒ぎを回避するために、3月16日から銀行が一時的に休業となっていましたが、3月28日正午(日本時間午後7時)から営業が再開されました。
ユーロの金融危機の岐路ともなりえるため、今後のキプロスの銀行預金の動きには目が離せません。
◆「引き締め一辺倒」の変わらないユーロ圏の救済策
これまでも資金繰りが悪化しているユーロ圏の国々は、政府歳出の削減と増税による「緊縮財政」を条件に融資を受けていました。
今回のキプロス支援で、銀行預金者や投資家にも損失が広がったことで、「緊縮度合い」が強まったという見方ができると思います。
ユーロ圏諸国でくすぶる金融不安を見ると、そもそも現行の「緊縮政策」はユーロの金融危機は乗り越えるための正しい政策なのでしょうか?
意外と知られていないことですが、ギリシャでは、2009年10月から財政危機が起こる前の2006年から増税して財政を回復しようと試みたにも関わらず、結局、財政再建はできませんでした。
こうした事実を見ても、「引き締め一辺倒」の政策を考え直す必要がありそうです。
ユーロ圏の財政危機・救済プログラムの何が問題かというと、結局「経済のパイを増やす」ことを考えていないことです。
また、ユーロは共通通貨を導入しているため、各国の情勢に合わせた金融政策ができないことも問題を複雑にしています。
◆国家にとって大切な金融政策
金融政策がどれほど重要か、過去に財政破綻した独自通貨を持つ国の事例から考えてみます。
2001年末に、アルゼンチンは、対外債務返済の不履行を宣言し、財政破綻しました。その後、為替変動制に移行し、アルゼンチン・ペソ安が背景となり、輸出が景気を牽引し、アルゼンチン経済は回復軌道に乗ることができました。
しかし、残念ながらユーロ加盟国は、通貨安による景気の牽引は期待できません。
そのため、成長路線に乗せるためには、「引き締め、引き締め」で国を縛るのではなく、ユーロでも、政府による景気刺激策を容認することが必要ですが、緊縮主義からの政策転換はすぐには期待できそうにありません。そこで、期待されるのが日本です。
◆日本から停滞するユーロに積極的な提言を!
ユーロ圏では、金融安全網として、欧州安定機構(ESM)から債券を今年1月から発行されています。
日本は2月末まで、発行総額の10.3%に相当する8億ユーロ(約984億円)を購入し、欧州経済の安定化に向け資金面で協力しています。(3/25 時事「ESM債の購入継続へ=政府」)
それだけではありません。日本は、これまでも欧州安定機構(ESM)の前身である、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)が2011年1月から発行開始した債券を継続的に購入してきました。
日本は、EU支援の実績を重ねてきています。だからこそ、日本は、もう一歩踏み込み、ユーロ圏を金融危機から回復するための意見提言をするべきではないでしょうか。
今、ユーロ圏に必要なことは、「経済成長」への政策転換です。2009年以来、幸福実現党がブレずに訴え続け、安倍政権で効果を発揮し始めている「財政出動・金融緩和・成長戦略」の成長パッケージを、ユーロ圏にも強力に提案するべきではないでしょうか。
日本の繁栄から、世界の繁栄へ。日本は世界を牽引していくリーダーたるべきです!(HS政経塾1期生・幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ)
英語教育に変化の兆し。今後の課題と方向性を探る [HRPニュースファイル589]
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◇英語の授業は英語で行う
文部科学省は、今春から採用される高校の新学習指導要領で「英語授業は英語で行う」ことを基本とする新しいルールを取り入れました。スピーチやディベートといったコミュニケーションを重視したことに特徴があり、英語教育に変化の兆しが出てきました。(毎日新聞3月26日参照)
現場の教員からは不満の声が上がっているのも事実です。
確かに、いきなり英語だけで授業を行うには一定の訓練が必要となります。英語教員といっても海外経験のない方や英会話、英語での議論ができるとは限りません。また、従来の学習指導要領では文法を重視してきており、教科書は日本語で書かれ、日本語で講義をしてきました。そのため、いきなり英語だけで授業をやるのは難しいという教員の意見も一理あります。
また、英語だけで授業をやる際、生徒はリスニング力(聞き取り)を高める必要があります。学校によっては外国人講師を採用しているケースもありますので、今まで外国人の英語を聞いたことがない生徒がいきなり英語だけの授業や日本語記述のないテキストは苦痛を感じるのは目に見えています。文法はリーディング(読解力)とライティング(文章作成力)の専売特許だと考えられがちですが、英語を母国語とする人たちは、make、get、goなどの中学英語を基礎にしたイディオム(熟語)を多用しています。市販のTOEICやTOEFLのテキストを見ても同じことが指摘されていることからみても、リスニング力を高めるためにも最低限の文法力は不可欠です。
従って、今後は「基本は英語で授業を行う」という方針のもと、基礎学力を確立するためにも日本語による文法重視のテキストを同時使用して授業が展開されていくことになるでしょう。
◇大学でも採用されつつある英語での授業
一方、大学サイドでは海外大学へ留学する際に必要なTOEFLを必須とする動きも出てきています。最近は、海外で博士号を取得する研究者が増えているので、高校と比較して大学では比較的スムーズにいく可能性はあります。ただし、日本の大学からアメリカや欧州の大学に留学するには、TOEFL対策を教えてくれる専門学校や英会話塾に通わざるを得えないので、高校の段階からメスを入れるのは極めて合理的です。
このように、高校と大学で進みつつある英語教育の変化ですが、最終的には生徒のやる気と教員の指導力や努力、創意工夫があってはじめて成り立つものです。成果が出るまでは時間がかかるかもしれませんが、日本人全体の英語力向上のためには必要な措置であると考えます。
◇世界にアピールするための語学力は不可欠
文部科学省の方針に関して、幸福実現党としては賛成の立場をとります。日本が国際社会において名誉ある地位を占めるためにも、英語で堂々とプレゼンができる政治家や企業家の輩出は不可欠です。
G8などでは日本の代表者は通訳を通じて交渉や会談を行うが常です。もちろん、微妙なニュアンスの間違いを回避するためには必要な措置であることは認めます。ただし、英語を母国語としない欧州やアジアの国々の代表者は普通に英語を使います。
筆者は2月にインドのニューデリーで開催された国際会議に出席してきました。Asia Liberty Forumと呼ばれる自由主義者が集まる会議でしたが、インド人をはじめとしてブータン人、インドネシア人は堂々と英語でプレゼンや質疑をしていました。http://bit.ly/Yu2YPq
筆者も彼らに触発されて質疑やディベートに参加しましたが、日本人が国際会議で目立たないとアジアでも注目されない国となり、Japan Passing(日本素通り)はますます加速するのではないかという強烈な不安を感じました。
韓国のメーカーであるサムソンでは、採用はTOEIC900点、幹部レベルは920点が最低限要求されます。実際は満点の990点に近い点数を取る人が多数いるようです(日本では680点から730点が海外駐在の平均)。サムソンやヒュンダイのような韓国企業が世界で活躍している背景には、徹底した英語教育で培われたディベート力にあるのは間違いありません。
◇領土問題や歴史認識問題にも語学力を
近年は、南京大虐殺や従軍慰安婦問題といった歴史認識問題がアメリカなどの第三国で宣伝され、日本政府も右往左往する事態が多発しています。
領土問題でも中国や韓国は欧米世論を巻き込むために意図的な捏造記事や意見広告などを英語で発信しています。このまま、日本政府が明確な反論をしないならば、日本は侵略国家の烙印を押され、極めて不利な立場に立たされます。この問題に関してもきちんとディベートし、世界に対して英語で発信していく機会を増やしていくべきです。
◇英語力と日本語での教養の上積みを
ただし、英語はあくまでもツールにしか過ぎません。
問題は内容なのです。きれいに話すことは大事ですが、「使える英語」とは、相手に伝わると同時に説得できる技術のことです。
加えて、英語熱を高めると同時に母国語での教育も大事にする姿勢は決して忘れてはなりません。古今東西の宗教的知識や芸術、古典文学や軍事知識などの教養がベースにあってはじめて国際人として堂々と太刀打ちができるのです。ディベートなどのコミュニケーション能力まで見据えるならば、英語力と日本語での教養の上積みとの両立は不可欠です。(文責:中野雄太)
普天間基地移設問題を巡る「ゴネ得」を許すな!――日米同盟を駆け引き材料にする沖縄県知事[HRPニュースファイル588]
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◆普天間飛行場移設へ一歩前進
防衛省沖縄防衛局は22日、米軍普天間飛行場の移設先である名護市辺野古沿岸の公有水面埋め立て承認申請書を沖縄県北部土木事務所に提出しました。(3/22 産経「辺野古埋め立てを申請 普天間移設で防衛省」)
幸福実現党は、普天間基地の辺野古移設(県内移設)を主張し続けて参りましたが、1996年に日米が普天間飛行場返還で合意してから17年を経て、ようやく実現へ一歩前進しました。
今後、埋め立ての許可権限を持つ沖縄県の仲井真弘多知事から許可を得られるかが焦点となります。この問題がいかに迷走してきたか、今一度振り返ります。
◆迷走に迷走を重ねた普天間移設問題
1996年、故橋本総理の下で、海上施設を建設し、7年以内に普天間飛行場のヘリコプター運用機能のほとんどを移設し、普天間飛行場を返還するという取り決めがなされ、2003年までに普天間基地は移設返還されることになりました。
しかし、大田昌秀・沖縄県知事(社民系)がこの合意に反対し、2年間にわたり日米合意は一歩も進まず、足踏み状態が続きました。
1998年11月、稲嶺惠一氏(自民県連推薦)が県外移設を訴える大田知事を破り、「県内に軍民共用空港を建設する」ことを公約にして当選しましたが、公約を守らず、のらりくらりと対応し、規模・工法・具体的建設場所等を決めるのに結局4年近くかかってしまいました。
稲嶺知事就任後6年たっても、建設現場では何も進みまず、2004年8月。沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落しました。まさに、こうした事故を無くすために、普天間基地移設を急いでいたのです。
稲嶺知事は米国に激しく抗議し普天間基地の早期返還を要求しましたが、サボタージュを続ける知事に本来言う資格はありませんでした。
2004年9月、建設予定水域でのアセスメント調査の準備開始。反対派の妨害で中止となり、海上保安庁は反対派の強制排除拒否。中止のまま年明けとなりました。
結局、稲嶺知事は公約、軍民共用空港案を進展しないまま、7年間を無為(知事のサボタージュ)に過ごし、白紙化されました。
◆普天間基地移設を巡る「ゴネ得」
2006年11月、沖縄県知事に「県内移設」を掲げる仲井真弘多氏(自民推薦)が当選しました。仲井真知事は、政府V字案の修正を要求し、基地県内移設は容認しました。
ところが、仲井真氏は知事に就任すると、「1cmでも沖合に出してくれ」と条件闘争を始めました。また、名護市も滑走路を沖合へ500メートル移動することを希望しました。
そして、2009年、民主党政権が誕生し、鳩山元首相の「少なくとも県外移設」発言で移設問題は振り出しに戻り、それに乗じて、仲井真氏は2010年の県知事選で、これまでの主張を一転、翻して「県外移設」を強調して再選されました。
野田政権は2011年9月、翌年度の沖縄関係予算を2400億円、内1000億円前後を自由に使える一括交付金とする方向を示しましたが、仲井真知事は予算全体を3000億円に増額し、全て自由に使える「沖縄振興一括交付金」とするよう要求。
普天間基地問題を解決したい日本政府は同年12月、沖縄関係予算を500億円上乗せして総額2937億円に増額し、一括交付金も500億円増額して1575億円としました。
その結果、沖縄県には中小零細を含むと5000社を超える建設関連業者が存在する異常な状態が生まれています。
更に、2012年3月には期限切れになった沖縄振興特別措置法を改正し、今後10年間の沖縄県への予算特別措置が決定されました。
米国務省のケビン・メア元・日本部長(元駐米沖縄総領事)が「日本人は合意の文化を『ゆすり』の手段に使う」と発言してバッシングを受けましたが、基地を巡る「ゴネ得」が横行していたことは事実です。
◆政府はリーダーシップを発揮し、普天間移設を断行せよ!
これら一連の沖縄の動きは巧妙な罠をしかけ、引き延ばすだけ引き延ばし、振興策のお金をダラダラもらう、そして普天間の軍用地主の利権もダラダラ先延ばしするというズルイ戦術を意図的に使っているとしか考えられません。
2010年、日本政府から「旭日重光章」を叙勲されているシンガポール政府高官が、日本を「図体のでかいデブの負け犬」と批評しました。
日本の「愚かさ、劣悪なリーダーシップ、ビジョンの欠如」がASEANでの地位後退を招いたと指摘しましたが、この沖縄県の経緯を見ると、日本の劣悪なリーダシップというより、そもそも国にリーダーシップがないと言わざるを得ません。
外交安全保障は、国の専権事項です。仲井真知事が公有水面の埋め立てを拒否した場合、政府は移転先の辺野古沖の埋め立て許可権限を、県知事から取り上げ、総理大臣に移す特別措置法の制定し、国家主導で迅速に移設を進めるべきです。(文責・加納有輝彦)
教育委員会の改革・廃止議論――隠ぺい・偏向に満ちた教育行政を抜本改革せよ![HRPニュースファイル587]
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◆盛り上がる教育委員会の改革・廃止議論
教育委員会に関する議論が盛り上がっています。
自民党は、昨年末の衆院選公約で「教育委員会の責任体制の確立と教育行政の権限のあり方の検討」を打ち出しました。
安倍首相も、2月28日の施政方針演説で「現行の教育委員会制度について、責任体制を明確にすることを始め、抜本的な改革に向けた検討を進める」ことを宣言しています。
政府は22日に教育再生実行会議の4日目の会合を開き、「教育委員会制度の抜本的改革」について集中的に議論を行い、次回までに素案を内閣へ提出する予定です。
また、日本維新の会は、教育委員会制度を廃止するための関連法改正案を今国会に提出する方針です。(3/21 NHK「維新教育委廃止法案の骨子」)
同骨子によれば、教育行政の責任が国では政府に、地方では首長にあることを明確化。形骸化している教育委員会を廃止すると共に、学習指導要領や法令に則った教育が行われているかチェックする監査委員を自治体に置く、などとしています。
◆形骸化している教育委員会制度
そもそも、「教育委員会」とは、各自治体に標準5名で構成される行政委員会で、学校の組織・人事・教育課程など教育に関する広範囲の事務を管理・執行する機関です。
ただ、実際の業務処理においては「教育委員会事務局」と言われる公務員組織(広義の教育委員会)が運営しており、教育委員そのものは「名誉職のようなお飾り」になっているのが現状です。
実際、教育委員会では実質的な議論がなされず、事務局がまとめた案を追認する機関に過ぎないとの批判もなされています。
上述の改革・廃止論議は、こうした「形骸化した教育委員会」を抜本改革するためのものでしょう。
その背景には、いじめや体罰問題などにおいて、学校・教育委員会ぐるみの隠ぺい体質が問題視されたり、教育委員会と日教組等の組合との癒着、一部学閥による人事の独占等も問題点として指摘されています。
また、沖縄県八重山採択地区では、適正な手続きで選定された「育鵬社」の中学校公民教科書を、竹富町教育委員会が拒否し、「東京書籍」の教科書を配布していることが問題になっています。(参考:[HRPニュースファイル571]「【国境の島の反乱】竹富町教委に告ぐ――教科書採択の違法状態を是正せよ!」)
さらには、部活における体罰について、保護者から指摘されても教育委員会は学校と共に認めなかったにもかかわらず、マスコミが取り上げた途端、教委が体罰と認めたりと、教育委員会の透明性や公正・中立性の存在には大いに疑問があります。
◆教育委員会の抜本的改革を!
しかし、形骸化・名誉職化した教育委員会を廃止すれば、問題が解決するかと言えばそうではありません。
維新の会の案のように、教育委員会を廃止して、自治体の首長が教育委員会の機能を担う制度にすれば、自治体の首長が革新・リベラル系の場合、左翼教科書の採用や自虐史観教育が徹底されるなどの危険性も懸念されます。
「教育委員会制度が形骸化している」のであれば、いかに「教育委員会制度を充実させる」かを考えるのが筋です。
そのためには、肝心の実務をおこなっている事務局、広義の教育委員会そのものの抜本的改革が必要です。
また、「政治的中立性」の確保という点も議論の対象にすべきです。
実際、地方議会において議員が教育に関することを質問しても、首長は明確なことは答弁せず、教育長(教員委員会事務局の長)に任せることがほとんどです。「政治的中立」は、無責任体制の言い訳としか機能していないのは明らかです。
そもそも教育委員会は、戦後GHQが日本の思想的教育的骨抜き方針のために創設を指示して始まった経緯があり、現状は大学の教員養成課程、組合活動と連なって左翼的な思想に染まっていることが多い教員委員会(事務局)自体が「政治的中立」を損なっています。
実際、宮城県においては宮城教育大学出身者の学閥が県教委・市教委の主軸を握っているとされ、学校における人事・組織編制において現在も大きな影響力を有しています。
今後、生徒・保護者の立場にたった教育改革のためには、教育委員会事務局組織の再編成に加え、教育委員会・学校現場を含めた民間人材活用等の規制緩和によって、風通しのよい教育現場・教育行政を再構築すべきです。
また、学力テストの結果による定量的チェックなど含め、人事制度改革も含め、生徒・保護者にとって喜ばれる教育が行われるようにマネジメントできるガバナンスの構築も必要です。
風通しが悪く、周りから死角になるようなところに、ゴミはたまります。
狭義の教育委員会だけでなく、教育行政組織全体をまず透明にし、白日の下にさらす改革が隠ぺい・偏向といった不純物を一掃し、子供たちの未来を守るための抜本改革が必要であると考えます。(文責・宮城県本部第四選挙区支部長 村上 善昭)