「中小企業大倒産時代」――消費税増税ストップで中小企業を救え![HRPニュースファイル616]

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◆「大倒産時代」到来の危機

金融庁試算によると、5~6万社の中小企業が倒産のリスクに晒されていることが明らかになりました。(3/29 産経「中小企業円滑化法、3月末で終了 5万社が倒産リスク 銀行の貸し渋りが障害」)

健全な経営をなっている企業にとっても、取引先の倒産による巻き添えによる連鎖倒産のリスクが増大しています。

本年3月をもって、金融機関に融資の返済猶予に応じるよう促す「中小企業金融円滑化法」が終了したことが最たるリスク要因です。

「中小企業金融円滑化法」とは、中小企業が金融機関に返済負担の軽減を申し入れた際、できる限り、貸付条件の変更等を行うよう努めること等を定めた法律のことで、民主党政権時代の2009年12月、亀井金融担当相(当時)が主導して制定されました。

同法は、2008年秋のリーマン・ショック後の倒産抑制に一定の歯止めを掛けたと評価されている一方、抜本的な経営再建を先送りさせたとの批判があります。

円滑化法は「一時的な延命措置」との指摘も強く、一時的に先延ばしにされた倒産案件が、同法終了後、一気に表面化する危険が高まっています。

◆倒産防止策が急務!

金融庁は円滑化法の終了が倒産増加につながらないようにするとしていますが、中小企業からは先行きに対して「主力行に今後も親身になって相談に応じてもらえるだろうか」との懸念の声が広がっています。

金融庁は4月以降も引き続き、返済猶予について柔軟に応じるよう求め、再建計画策定などの条件を満たせば不良債権として扱わなくてもよいとし、「融資姿勢を変えさせない」と強調しています。

しかし、過去に円滑化法を活用した企業の倒産は既に増えており、帝国データバンク大阪支社によると、関西では昨年5月以降、10カ月連続で倒産件数が前年同月を上回っています。同支社は「秋以降にはさらに増える恐れもある」とみています。(3/31 毎日)

金融機関でも「半年ほどすれば、返済猶予を続けられないケースが増えてくる」との見方があり、倒産増のリスクに備えて引当金などを増やしています。

金融庁では、同法を利用した30万~40万社のうち2割弱に当たる5万~6万社で倒産のリスクがあると試算、「延命」に軸足が置かれた円滑化法終了後の倒産防止策が急務であることは間違いありません。

◆消費税増税ストップで中小企業を救え!

アベノミクスで株価が上昇したと言っても、中小・零細企業にアベノミクスの恩恵が行き渡るのは、まだまだ先です。

むしろ、現在は円安によって輸入資材調達やエネルギーの価格が上昇し、企業活動に悪影響を及ぼし始めています。既に、ガス・電気料金や食料品などの値上げが相次いでいます。

更に、原子力規制委員会による「新規制基準」によって、原発再稼働のハードルはますます高くなり、更なる電気料金の高騰も懸念されています。(→[HRPニュースファイル606]遠のく原発再稼働――日本の原発技術の流出を防止せよ!)

また、アベノミクス政策によって、毎年2%の物価上昇や賃金上昇がなされれば、元々物価や人件費が高い日本の製造業にとっては、国際競争力低下は必至で、早急な構造改革やイノベーションが必要です。

このように中小企業に景気回復が及ばない中、倒産リスク要因が続出する時期に、来年4月から消費税増税を決行しようとしている政府の判断は、正気の沙汰とは思えません。

中小企業金融円滑化法終了後の最大の倒産防止の方法は、消費税増税の中止以外にありません。

今回の参議院山口選挙区補欠選挙、そして7月の参院本選は「消費増税の是非」を問う選挙です。

国民の声を幸福実現党に結集し、消費増税をストップし、中小企業の危機を救って参りましょう!(文責・岐阜県参議院選挙区代表 加納有輝彦)

教育現場に成果主義を導入せよ![HRPニュースファイル615]

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◆「学校週6日制」で教員増員が必要?

安倍政権下で様々な教育改革の具体案が提示され始めています。

文科省が公立校に導入を検討し、拙文でも以前論じた「学校週6日制」については、既に一部自治体では前倒しで実施されています。

しかし、本格実施にあたっては、教員の勤務時間の調整が困難で、「導入するなら教員増するべき」との議論が起きることが予想されます。(4/9 毎日「土曜授業:月2回が上限『導入なら教員増を』」)

このように、教育改革にあたって、すぐに教員像・コスト増を求める体質は、教育現場に「コスト意識」が欠落している証拠です。

もし、教員増・コスト増が伴う可能性があるならば、そうした投資に見合った質の向上や、成績向上等の投資対効果を文科省や政府が検証すべきです。

◆教育改革は質の向上に焦点をあてよ!

同様に、改革が単なるコスト増だけになる可能性は他の案にもあります。

自民党は、通常の教員免許取得した教員志望者に、まず「准免許」を与えて学校に配属。3~5年の試用期間後に本免許を与える案を検討しています。(4/14 毎日「<教員制度改革>「試用」3~5年 新卒は准免許 自民検討」)

これは指導力不足教員の見極めや選別に現場での時間をかけることで、教員の質の向上が図られるとされていますが、試用期間中の見習い教員を置くということは、その分、担任を任せられない教員が増え、コスト増となる一方、教員の資質の測定手段は決まっていません。

改革にはコストがつきものですが、ただでさえ、公立学校の問題・課題が指摘されている中では、やはり成果に焦点をあてた改革でなければ、税金の追加投入の根拠たり得ません。

◆教育に成果主義を導入したイギリス

その点、参考になるのはイギリスの教育改革です。

昨日のHRPニュースファイルでも論じられましたが、イギリスのサッチャー氏に始まるかつての教育改革が素晴らしいもう一つの点は、教育現場に成果主義を導入し、予算を効果的に使ったことです。

サッチャー首相とそれを引き継いだブレア首相によって、全国学力テストの結果公表と、学校選択の自由の推進、そして学校ごとの成績や生徒数、外部機関による査察結果に応じたメリハリある予算配分を各学校に実行しました。

この結果、校長や教員による学校運営・授業の創意工夫・自助努力の質向上が促進され、それまで学力が振るわなかった地域の学校が劇的に成績向上する例も出ました。

中でも有名なのは、2002年にNHKが「授業崩壊からの脱出―シャロン校長の学校改革」で紹介したロンドンの小学校の例です。

イギリスでは教育に成果主義を導入し、改善に成功した学校には予算を多く配分するようにしました。

そして、学校長とそれを任免する理事会の権限を強化し、予算の執行や教職員の人事権などを任せたのです。

結果、校長は教育者でもあると同時に、学校経営者としてマネジメントの手法を使うことができるようになりました。

シャロン校長は学力最下位層の学校に赴任して改革を進め、国語・算数・理科の平均点が300点満点で44点だったところを、4年間で282点にし、その栄誉にエリザベス女王から勲章が授けられたそうです。

実際に、こうした成果を出した過程では、シャロン校長は優秀な教員を養成・獲得するため努力し、4年間ですべての教員を入れ替えたといいます。

◆教育改革は生徒・保護者の視点で判断せよ

こうした「痛みを伴う改革」は、終身雇用がいまだ当然の我が国の公立学校の現場ではかなり抵抗されるかもしれませんが、良い先生に担当してほしいというのは生徒・保護者の共通の願いです。

現在進行中の安倍政権による教育改革案も、今後も様々に議論されると思いますが、それらの良し悪しの判断の根拠は、最後は単純に「生徒がより通いたいと思う学校になるか」「保護者が通わせたいと思う学校になるか」という、顧客の立場での判断に基づくべきです。

幸福実現党の教育改革は、生徒や保護者の味方になる改革です。そのために、「いじめ対策」「歴史教育の充実」をはじめ、学校運営の規制緩和、民営化・自由化等を次々と実現していく所存です。(文責・宮城県本部第4選挙区支部長 村上善昭)

日本はサッチャー教育改革から学べ![HRPニュースファイル614]

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サッチャー元首相の葬儀が17日、女王はじめ世界から2000人が参列しロンドンのセントポール大聖堂で営まれました。

改めましてサッチャー元首相の功績を称えるとともに、心よりご冥福をお祈り致します。

◆「英国病」を克服したサッチャーの教育改革

これまでHRPニュースファイルでも、民営化や規制緩和等による新自由主義的な経済改革によって、国家衰退をもたらしていた「英国病」を救った故サッチャー元首相の功績を述べて参りました。

サッチャー元首相が「英国病」を克服した原動力には、「経済改革」に加え、「教育改革」を断行したことがよく知られています。

安倍首相も「誇りを回復させたサッチャーの教育改革」として「サッチャー首相は、イギリス人の精神、とりわけ若者の精神を鍛え直すという、びっくりするような意識改革をおこなっているのである。それは壮大な教育改革であった」と絶賛しています。(安倍晋三著『美しい国へ』文春新書)

サッチャー氏は1988年、「教育改革法」で、「教育水準の向上」と「自虐的偏向教育の是正」の2つの政策を断行しました。

「教育水準の向上」については、当時、国際教育到達度評価学会(IEA)による国際数学・理科教育調査でトップクラスであった日本をサッチャー首相自身が視察、教育改革の手本にしています。

◆自虐史観教育が生み出した「英国病」

イギリスでは先の大戦後半から自虐的偏向教育が行われるようになりました。

チャーチル率いる保守党が戦争遂行の緊急課題に専心する中、教育改変が連立政権内の労働党(左派政党)主導で行われたことがきっかけです。

1944年に改変された「教育法の三本柱」には、「児童の権利を尊重する人権教育の推進」「イギリス帝国主義批判の歴史教育の推進」「教師の自主性を尊重する教育行政の確立」が掲げられました。

ここで「イギリスの帝国主義批判」を「日本軍国主義」に置き換えれば、日本の「日教組」の方針と酷似していることが分かります。

イギリスの日教組とも言える「教師労働者連盟」は、自国の歴史や伝統を否定する教育を推し進めましたが、これは労働党が政権を取るための選挙戦略でした。

1960年代以降、インドなどの旧植民地諸国が相継いで独立した際、イギリス側に加担していた人々が移民として流入し、学校でも英語が話せず、キリスト教以外の宗教を信ずる生徒が急増しました。

労働党は、これらの移民を支持基盤に取り込もうとして、組合教師が大英帝国を「侵略国家」として教え、インドなどの植民地支配における残忍性をイラストで解説。キリスト教は「人種差別を正当化する宗教」と非難しました。

◆サッチャー元首相の教育改革

こうした自虐史観教育が「英国病」を深刻化させる中、1979年、サッチャー保守党政権が成立。「教育改革」を旗印に自虐的偏向教育の改革と宗教教育によるイギリスの復活を目指しました。

1988年の「教育改革法」では、基礎教育科目を定め、歴史教育では、ナポレオン戦争におけるネルソンが果たした功績や、世界に先駆けて行った奴隷貿易廃止など、「英国史の光」に焦点をあて、自国に誇りが持てるようにしました。

宗教教育ではイスラム教やヒンドゥー教の信仰は自由とした上で、イギリスの宗教的伝統であるキリスト教を「必修科目」としました。これらの改革で、イギリスの教育は劇的に変わっていったのです。

◆日本は自虐史観の克服をサッチャー教育改革から学べ!

戦後、日本では、GHQが「日本弱体化政策」の重要な柱として、日本を侵略国家として子供たちに洗脳する「自虐史観教育」を学校教育に導入し、日教組が中心的役割を担いました。

昭和57年(1982年)には、誤報であったにもかかわらず。教科書検定において「『侵略』を『進出』と書き直した」という大手新聞の報道をきっかけに、中国や韓国が日本の教育に対して激しい内政干渉を行って来ました。

中韓の干渉に屈した時の自民党の鈴木内閣が教科書検定基準に「近隣諸国条項」を設けました。

そして、これ以降、中韓を刺激にないよう配慮せざるを得なくなり、「南京虐殺」「従軍慰安婦」など、教科書に記述しなければ教科書検定を通ることができなったのです。

「反日」を国策とする中国や韓国の歴史観に基づいて、日本の子供の教育が行われているのが日本の教育の現状です。

「日本は他国侵略した悪い国」と教えられていては、子供たちが自国の歴史に誇りを持てるわけがありません。

国家の教育とは、その国を支える立派な国民を育むことが基本です。

そのためには、自国民が誇りを持てるよう、自国の歴史の光の部分を教える必要があります。

自国への誇りが立派な国民を育て国の活力になっていくのです。

今こそ、日本はサッチャー氏の教育改革に学び、日本の教科書を歪めている「近隣諸国条項」を廃止し、中韓の内政干渉に左右されない、誇りある日本の歴史を取り戻すべきです。(文責・政務調査会 佐々木勝浩)

【参考文献】
大川隆法著『サッチャーのスピリチュアル・メッセージ』幸福の科学出版
椛島有三編著『教育荒廃と闘うイギリス』日本会議ブックレット
八木秀次著『国家再生の哲学』モラロジー研究所

政治に経営力を!公会計改革で政治の経営判断を高めよ![HRPニュースファイル613]

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4月16日、衆議院本会議において、92兆6115億円となる平成25年度予算が可決され、参議院に送付されました。

予算成立の目処は立ったものの、国の借金が1000兆円に迫る中、財政健全化が大きな課題となっており、毎年の予算編成は単なる税金の垂れ流しなのか、経営判断に基づくものなのかが問われています。

◆「予算単年度制」の問題点

憲法86条には「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない」と明記され、財政は「予算の単年度制」を原則としています。

しかし、「予算の単年度制」には、目先の予算獲得による行政コストの肥大化や、年度末に余った予算を無理に使い切る予算消化など大きな欠陥があります。

このような税金の無駄づかいを払拭するために、幸福実現党は立党以来、「予算の単年度制」廃止を提言して来ました。

大規模な国家プロジェクトに対しては複数年度にわたって予算を編成することや、好況で税収が増えた際には積み立てていく「ダム経営」など、政治にもっと「経営力」を導入すべきです。

貸借対照表(バランスシート)に基づく経営判断など、企業で行われている努力が、政治においても当然に行われるべきです。

実際、衆議院憲法審査会は4月18日、憲法第7章「財政」について審議し、複数年度にまたがる予算編成を可能とすることに前向きな姿勢を示しています。(4/18 読売)

◆「単式簿記・現金主義」の問題点

同審議では、会計制度についても議論されました。現在の会計制度は「単式簿記・現金主義」に基づいており、単に現預金の出納だけ記帳する方式で、予算を「使ったか」「使わなかったか」しか分かりません。

その結果、「予算=決算」という民間企業では信じられない「予算消化」が繰り返されてきました。

新会計制度と言われる「複式簿記・発生主義」では、経済資源の増減について取引の発生ごとに記帳され、「資産(ストック情報)」「支出(コスト情報)」「費用対効果(コストパフォーマンス)」「経営評価(経済性・効率性)」など、マネジメントの視点を重視し、予算の執行だけでなく、決算という評価を行うものです。

これは企業経営では当然のことで、予算以上に決算が重視され、経営の改善・イノベーションを不断に重ねています。

東京都は平成18年度から会計に複式簿記・発生主義会計を取り入れた新公会計制度を導入。本年度からは愛知県をはじめ、財政難となっている地方自治体に新公会計制度が広がり始めています。(2012/12/20 愛知県「愛知県における公会計改革の取組」)

石原慎太郎氏は17日の党首討論後、記者団に対して「公会計制度は、あなた方メディアの不勉強で、日経新聞なんか1行も書かないし、こんな馬鹿な無駄を放置している国はないよ。単式簿記とかやってる国は日本の他にないんだから、本当に。こんなものがはびこっているから、役人が勝手なことをして、国民が馬鹿みるんだよ。こんなことやってる国なんて、北朝鮮とパプアニューギニアとフィリピンだけだよ。先進国では日本ぐらいだ」(4/18 朝日)と、公会計改革の必要性を訴えています。

◆早急に公会計改革を進めよ!

サッチャー首相の死去により、サッチャーの政治手腕が再考されていますが、「イギリス病」から復活を遂げた背景にも公会計の導入がありました。

サッチャー首相とも親交のあった公会計研究所・所長の吉田寛教授は「会計の基本的な機能は、帳簿を作ったり、財務諸表を作ったりすることではありません。約束を守れる人か、守れない人なのかを伝えることが重要な機能です」と、主権者である納税者への説明責任がなされ、信認すべき政治であるか、政権選択を行えるところまで行くことが公会計の使命であると啓発活動を展開されています。

「公会計研究所」方式では、借金が増えているのか、減っているのか、というマネジメントの側面のみならず、さらに踏み込んで、納税者である主権者がどれだけの負担をしているの、本当に必要な施策なのかを主権者が判断できるところまで明示する公会計を提唱しています。

幸福実現党は「新日本国憲法試案」第十一条で「国家は常に、小さな政府、安い税金を目指し、国民の政治参加の自由を保障しなくてはならない」と国のあるべき姿を示しております。

今こそ、新たな公会計の導入を推し進め、税金の無駄をなくし、主権者である国民が正しく政治参加できる本物の民主主義政治を実現すべきです。(幸福実現党 三重県本部参議院選挙区代表・小川俊介)

対北朝鮮:今こそ巡航ミサイルによる抑止力強化を![HRPニュースファイル612]

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◆「最悪の事態」を想定せよ!

日本政府は依然、北朝鮮が弾道ミサイルを発射する可能性が高いとみて、厳戒態勢を維持しています。(4/19 産経「厳戒態勢を維持 官房長官」)

北朝鮮がミサイルを撃つのか撃たないか、撃つとしたらいつ撃つのか、ギリギリの線での駆け引きがなされており、まさしく神経戦の様相を呈しています。

このような状況の中、4月16日、大川隆法党総裁が公開霊言「金正恩の本心直撃!」を緊急収録。日米韓を揺さぶり続ける金正恩氏の驚くべき「本心」が明らかになりました。⇒http://www.hr-party.jp/new/2013/37096.html

このような老獪極まる神経戦を耐え抜くためには、日本は「最悪の事態」に備える必要があります。

「最悪の事態」とは、北朝鮮が本気で日本に核ミサイルを発射しようと目論み、既に準備がなされている事態です。

こうした事態を想定すると、日本が取り得る対抗手段は「抑止力」を備える以外にはありません。

◆「抑止力」とは何か?

「抑止力」には「懲罰的抑止(deterrence by punishment)」と「拒否的抑止(deterrence by denial)」の二つの概念があります。

「懲罰的抑止」とは、相手が攻撃してきたら、相手に対して「耐え難い打撃」を与えることができる能力と意思を示すことにより、相手が戦争を仕掛けてくるのを思いとどまらせる戦略です。

例えるならば、「殴られたら殴り返す」能力を持ち、それを明確に宣言することで、相手が喧嘩を仕掛けてくることを押し止める力です。

「拒否的抑止」とは、相手の目標を物理的に阻止することによる抑止のことです。

例えるならば、「殴りかかってきたら回避できる」能力を持つことです。

前者の代表格は「核抑止(核武装)」であり、後者の代表格は「ミサイル防衛」です。

日本の「ミサイル防衛」は、二段階の防御態勢が組まれています。まずはイージス艦の海上配備型ミサイル(SM3)が大気圏外で迎撃。そこで迎撃できなかったら、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が発射されます。

しかし、二段階であっても、迎撃に失敗する可能性はゼロではなく、また、PAC3の射程は上空20キロで横への広がりは数キロしかなく、ピンポイントで守ることを目的としたミサイルであるため、日本全土を守ることは不可能です。

したがって、「拒否的抑止」(攻撃回避)として、北朝鮮の弾道ミサイルの発射を阻止するためには、発射前に攻撃して叩く必要があります。これが「先制攻撃(preemption attack)」の概念です。

◆現憲法で「先制攻撃」は可能か?

「先制攻撃」とは、相手が攻撃を仕掛ける前に攻撃することであり、「拒否的抑止」の一種です。

現行法制下における「先制攻撃」についての政府見解は、1956年2月29日の衆議院内閣委員会で、鳩山一郎首相の答弁を船田中防衛庁長官が下記の通り、代読しています。

「わが国に対し急迫不正の侵害が行われ、侵害の手段として誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが、憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられない。攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは自衛の範囲内に含まれ、可能であるというべき」(第二十四回国会衆議院内閣委員会会議録第十五号)

すなわち、敵がまさに攻撃しようとしており、その攻撃が避けられないこと、そして先制攻撃によってその脅威を除くか、少なくとも及ぼされる害が削減される見込みがある場合に、「先制攻撃」を行うことは現行憲法下でも認められているのです。

◆先制攻撃の手段としての「巡航ミサイル」

仮に先制攻撃をする場合、最も有効な手段が「巡航ミサイル」です。

「巡航ミサイル」とは、飛行機のように翼とジェットエンジンで水平飛行するミサイルで、GPSシステムを搭載しているため、複雑な地形をぬって飛び、目標に命中するという精度の高さを持っています。

巡航ミサイルは航空機、艦艇や潜水艦等に搭載することが可能であり、射程は最大で3000km(アメリカのタクティカル・トマホーク)を誇るものもあります。

弾頭はそれほど大きくはありませんが、重要な拠点を必ず破壊できるだけの破壊力を持っています。

アメリカのトマホーク巡航ミサイルは、垂直発射システムを用いるタイプですので、日本の護衛艦にもすぐに導入することができます。

ただし、巡航ミサイルは精密なGPSシステムによってコントロールされているため、日本が巡航ミサイルを導入するためには、日本独自のGPS衛星を多数導入する必要があります。

「日本版GPS衛星」の運用は、巡航ミサイル導入のためだけではなく、日本の国防や民間利用に有益な投資となるはずです。

もちろん、不確実な情勢に対応するためには、巡航ミサイル等の導入だけでは到底おぼつかず、「自分の国は自分で守る」ことを安全保障政策の中心に据え、自衛隊の強化による自主防衛政策を実行する必要があると言えます。(文責・黒川白雲)

「集団的自衛権行使の容認」を宣言できなければ責任政党に非ず[HRPニュースファイル611]

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◆北朝鮮の核搭載能力を否定する日米首脳

安倍首相は4月18日、日本テレビの番組「スッキリ!!」に出演し、「(北朝鮮に)今の段階でミサイルに載せる核兵器はない。そこまで小型化には成功していない」と述べました。(4/18 ブルームバーグ)

これは、4月16日のオバマ米大統領の「北朝鮮は弾道ミサイルに核を搭載する能力を獲得していない」という発言に同調したものでしょう。(4/18 CNN)

◆北朝鮮の核ミサイル保有を指摘する多くの見解

現在、日米両国の国家指導者は、国民を安心させるために、北朝鮮の核搭載能力を否定する発言を重ねていますが、軍事専門家からは、北朝鮮のミサイルへの核搭載能力向上について危惧する声が次々と上がっています。

例えば、2月13日には米科学国際安全保障研究所所長のデイヴィッド・オルブライト氏は”North Korean Miniaturization”と題するレポートを発表。北朝鮮はノドン・ミサイル用弾頭の小型化は十分可能と主張しています。

また、4月12日、CNNは米国防総省傘下の国防情報局(DIA)が、北朝鮮は弾道ミサイルに核兵器を搭載する能力を持つ可能性が高いとの報告書をまとめていたことを報道しています。

ヘーゲル国防長官は「北朝鮮は脅威の水準を超えた状態。すでに実質的な核パワーとなっている」とも述べており(1月31日)、北朝鮮の核開発能力の向上については決して楽観視を許さない状況となっています。

2月13日、韓国の聯合ニュースは「北朝鮮を核保有国とした報告書が提示され、米情報当局も北朝鮮がプルトニウムを利用した核兵器を6~10個保有していると推定している。北朝鮮も昨春に改正した憲法に自国を『核保有国』として公式に明記した」と警鐘を鳴らしています。

また、デンプシー米統合参謀本部議長は公式の場で「核実験を行い、弾道ミサイルの発射実験も何回か成功させている。最悪のケースを想定する必要がある」と発言しています。(4/11 共同)

こうした観点からも、北朝鮮がノドン・ミサイルへの核搭載能力を既に保有していたとしても決して不自然ではありません。

◆政府は「最悪の事態」を想定し、備えを万全にせよ!

外交・安保政策の基本は、デンプシー氏が述べたように「最悪のケースを想定」し、その対策を練ることにあります。

しかし、日米両首脳は現状を糊塗し、目の前にある危機から国民の眼を背けさせようとしているように見えます。

安倍首相は参院選まで安全運転を行い、国防を選挙の争点とさせないために「北朝鮮にミサイル搭載可能な核兵器はない」と述べたのだとしたら、自衛隊の最高指揮官としての資質を疑われてもしかたがありません。

クラウゼヴィッツは『戦争論』で「軍事的行動の基礎を成すところのものの四分の三は、多かれ少なかれ不確実という濃霧に包まれて」いるために、軍の指導者には、その中で、『真実を照破する』知性と、その『乏しい光りに頼って行動するところの勇気』を発揮することが求められる」と述べています。

各国の軍事情報は、衛星システムを始めとした情報技術が進化した現在も「不確実性の霧」の中に包まれていますが、国家のトップは「霧」の中で国民を守るための決断を下すべきです。

◆集団的自衛権の行使を容認せよ!

安倍首相は、北朝鮮の核ミサイル保有が進んでいる事実を直視し、いち早く、同氏の持論である「集団的自衛権行使容認」を宣言すべきです。

安倍首相が以前に首相をしていた時、この問題について専門家に調査をさせたものの、結局は「容認すべきだ」と宣言することはできませんでした。

元大使であった村田良平氏は、こうした安倍総理の不決断について「この問題を検討する委員会を設けたこと自体不要であり、私は、不見識とすら感じた」と批判をしていました。

そもそも、「集団的自衛権はあるが、使えない」という現在の政府解釈は、55年体制の下で野党の勢力がかなり大きかった時代の国会対策として出されたものに過ぎません。(『村田良平回想録下巻』p.295)

集団的自衛権の行使を容認しない限り、(1)戦闘地域での自衛隊の活動、(2)米軍艦艇の防衛、(3)米軍への武器の提供、(4)米国領(グアム基地等)へ撃たれたミサイルの迎撃等に困難をきたし、朝鮮有事勃発の際、日米同盟が機能不全に陥る危険性は高いと言えます。

第二次朝鮮戦争勃発の危険性が高まる今、安倍首相は「集団的自衛権」の行使を認める判断を先延ばしにすべきではありません。

幸福実現党は、「国民の生命と安全と財産を護る」責任政党として、現政権に「集団的自衛権の行使の容認」を一刻も早く宣言することを要請しています。(2/12 幸福実現党「北朝鮮の核実験に対する党声明」)

今、日米同盟下での両軍の協調体制を予め構築しておかなければ、突然、第二次朝鮮戦争が勃発した際に、日本は有事対応ができなくなることを知るべきです。(文責・HS政経塾 遠藤明成)

北朝鮮は民主化へ向け、ミャンマーの民主化を範とせよ![HRPニュースファイル610]

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◆拉致被害者家族の気持ち

現在、朝鮮半島はミサイル発射や戦争勃発の危機が高まり、予断を許さない状況にありますが、私たち日本人にとって、より身近で、未だ解決の糸口が見つからない問題に「北朝鮮による日本人拉致問題」があります。

先日、拉致被害者の家族の方に、朝鮮半島が緊張が高まる中、どのような気持ちをお持ちなのか、直接聞いてみる機会がありました。

「いざという時には、どの国の大使館でもよいから逃げ込んで欲しい。そのために各国の大使館に政府認定者だけではなく、拉致の可能性のある方々の情報開示を急いでほしい。」――多くの拉致被害者家族の本音であろうと思います。

◆拉致被害の真実

1970年代から80年代にかけて、北朝鮮による日本人拉致が多発。現在、17名が政府によって拉致被害者に認定され、2002年、北朝鮮は日本人拉致を認め、謝罪しました。

その後、5名の拉致被害者が帰国しましたが、残りの拉致被害者については未だ納得のいく説明がありません。

さらに政府が認定した被害者以外にも、いわゆる「特定失踪者」と呼ばれている方々がおり、昨年12月、警察庁が拉致の可能性が排除できないとして捜査、調査している人の総数は男性636人、女性が232人、合計868人となっています。驚きを隠せない数字です。

北朝鮮の拉致は、当初は、韓国に対する工作活動として、韓国の漁夫等を狙っていましたが、その後、優秀な日本人にターゲットを絞ってきたことが、日本人拉致の始まりです。

◆拉致状況から考えられる拉致の目的

日本人の多くは、日本海沿岸部の方々が拉致被害に遭っているという印象がありますが、拉致被害者の住居は日本全国にまたがっており、明確にターゲットを絞り、拉致が実行されています。

例えば、印刷会社勤務のNさん、写真印刷技術者のEさん、脱硫技術研究者のYさんちは偽札を製造するため。原発関係の技術者Aさん、ロボットアームの研究者Kさん、ミサイル部品製作に必要な精密機械制御の技術者Yさん等は原発・核兵器・ミサイル開発要員として拉致された疑いが持たれています。

拉致被害者を分析すると、印刷、原子力、医療、映画、偽札・パスポート偽造等の特殊技術者、工作員日本人化教育の教官とその配偶者、拉致した日本人を工作員として使うこと等が拉致の目的であることが分かります。

そして、ここから浮かびあがってくる北朝鮮の国のあり方は「人を奪う」「能力を奪う」「技術を奪う」「お金を奪う(ニセ札を造る)」「人の魂を奪う」――そこには「奪う」ことで成り立っている国家体制が浮かび上がって来ます。

◆北朝鮮は民主化へ向かうミャンマーを模範とせよ!

アジアには、北朝鮮が範とすべき多くの国々があります。アジア最後のフロンティアとして、今、注目をあびているミャンマーもその一つです。

ミャンマーでは、1988年以降の軍事政権下において、幾度となく民主化弾圧が行われてきました。現在、来日中のアウン・サン・スー・チー氏も長期間、自宅軟禁を繰り返し強いられてきました。

しかし、変化が起こったのは2011年3月。テインセイン元将軍が大統領の座について以降、政治犯の釈放、スーチー氏との対話た選挙の出馬許可、少数民族武装組織との和平交渉、管理変動相場制への移行、外国投資法・農業関連法・開発関連法の改正等、矢継ぎ早に民主化に向けた改革を進めて来ました。

特に注目すべきは、新聞や雑誌、書籍の「事前検閲制度の廃止」、すなわち「メディアの自由化」です。「言論の自由」を大幅に認めたのです。

民主化により、欧米による経済制裁が解かれ、世界市場と繋がったことで、多くのミャンマー人は、民主化が生活改善に繋がることを実感しています。

◆宗教に基づく国家再建を成し遂げよ!

そして特筆すべきは、ミャンマーでは軍事政権化でも宗教を尊重し、寺院を焼き払ったり、人々から信仰を奪ったりはしなかったということです。

軍事政権下でもしっかりと宗教を守っていたのです。この事実を真正面から捉え、国の柱は正しい宗教から成り立つことを明確に認識すべきです。

今、信仰心篤い仏教徒であるスーチー氏は「民主的な社会を作るためには、他者を愛し、慈しむ仏教の教えを前面に出さないといけない」と仏教思想に基づいた民主化の実現を訴えています。(4/16 毎日「アウンサンスーチー氏:仏教思想に基づいた非暴力、大学講演で訴え『他者を愛し、慈しむ』」)

宗教政党である幸福実現党は、世界の平和と正義の「あるべき姿」をデザインし、同じアジアの同胞である中国や北朝鮮に「あるべき姿」を示して参ります。(文責・埼玉県本部選対 院田ひろとし)

インフレ目標導入――日銀に起きた「革命」の起源を考える[HRPニュースファイル609]

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◆日銀のインフレ目標導入は「革命」的出来事

アベノミクスの下、黒田日銀新総裁の掲げる金融政策は、これまで日銀が固執して来た政策を大転換するものであり、ある種の「革命」であります。

今一度、その「革命」の原動力とは何であったのか検証したいと思います。

2~3%の「インフレ目標」を日銀に要請することを公約に掲げた自民党が圧勝した昨年末の総選挙は「日銀に対する国民投票であった」という評価があります。

※「インフレ目標(インフレターゲット)」とは、中央銀行が物価上昇率の目標を設定し、その達成に主眼を置く金融政策のことです。

確かに、安倍政権誕生後、本年1月に日銀の金融政策決定会合が開かれ、日銀は「2%の『物価安定の目標』を導入すること」を決定しました。

実施時期や規模は不十分なものではありましたが、過去の日銀が頑なに「インフレ目標」の導入を拒んできた歴史を振り返ると、先の総選挙が「日銀に対する信任投票であった」という評価も納得できます。

◆インフレ目標導入を拒んで来た歴代日銀総裁

過去の日銀総裁の発言を振り返りますと、速水総裁(1998~2003)は、インフレ目標を称して「このようなバカな金融政策はあり得ないと思う。インフレターゲットというのは、インフレの国が採用しているのであって、デフレの国がやっているというのは聞いたことがない。(2001.8.14)」と発言。インフレ目標に否定的でした。

福井総裁(2003~2008)は「インフレターゲットでは、インフレ期待が上昇する場合、早い段階で引き締めしなければ、いずれの時期に目標を飛び越えてしまう可能性がある(2003.6.1)」と同じく否定的でした。

白川総裁(2008~2013)も「物価も賃金も上がらない状況が長く続いた経済で、いきなり人々のインフレ予想だけが先行して高まると考えるのは現実的ではありません。多くの国民は物価上昇を否定的に捉えている。(2012.11.12)」と否定的でした。

一方、日銀の黒田総裁(2013~)は就任早々、2%のインフレ目標を掲げ、予想以上の大規模な金融緩和を断行すると公言したのです。今昔の感にたえません。

三権の長にも匹敵する強力な権限を手にした日銀の独立体制が、このようにある意味、一気に瓦解することを誰が予想し得たでしょうか。

◆アベノミクスに大きな影響を与えた幸福実現党の金融政策

また、前政権時には、必ずしも経済通とは見えなかった安倍首相が、突然「アベノミクス」と呼ばれる三本の矢の経済政策を全面に堂々と押し出したことについて、不思議がる論調も見られました。

アベノミクスの源流にあるものは、幸福実現党の政策であります。

幸福実現党は、どの政党も「インフレ目標」を主張していなかった立党当初(2009年)より「大胆な金融緩和」を訴え、その後、多くの政党が追随するようになりました。

実際、大川隆法党総裁は以下の通り、一貫して「インフレ目標」「大胆な金融緩和」の必要性について発言して来られました。

「幸福実現党はインフレターゲットを設けている。まずは3%くらいの成長を向こう3~4年目指して、その後は5%以上の高度成長にもっていく、それが幸福実現党の政策です。」(2009.7.19『景気回復への道』)

「今やらなければならないことは、一番簡単なことは、まずは、通貨の供給量を増やすことです。これが一番先にやらなければいけないことで、今デフレですけれども、とにかく、インフレ傾向にもっていかないとだめです。『人工インフレ』をつくるしかないです。」(2009.11.4『新しい選択-2009街頭演説集セミナー』)

「(日銀は)成長軌道に乗せるのが怖いインフレが恐ろしいと言うけれども、もう20年くらいデフレが続いていて何がインフレが怖いのか分からない。むしろ今必要なのはもう一段経済を成長軌道に乗せること。」(2010.9.26『ザ・ネクスト・フロンティア講義』)

特に、昨年発刊された『日銀総裁とのスピリチュアル対話~通貨の番人の正体~』『平成の鬼平へのファイナル・ジャッジメント~日銀・三重野元総裁のその後を追う~』(いずれも大川隆法著、幸福実現党発刊)は、世の中の日銀批判に決定的な影響を与えました。

幸福実現党の金融緩和政策の目的は、流動性を高めて中小企業に資金を供給し、悲惨な倒産を防止すると共に、インフレ傾向にもっていくことで、消費・投資拡大(景気拡大・経済成長)に向けた経済環境を創り出すことにあります。

そのためにも、消費不況をもたらす消費増税は、金融緩和の効果を真っ向から相殺するものであり、絶対にやってはならない愚策であります。(文責・加納有輝彦)

日本の繁栄のために、今こそ、人口増加政策を![HRPニュースファイル608]

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◆全都道府県で少子化が加速

2020年全都道府県で人口減、都市部も高齢化加速」――これは3月28日付の日経新聞に掲載された記事の見出しです。

厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が発表した推計によると、全ての都道府県で2020年から人口が減り、2040年には7割の市区町村で人口減少率が20%以上となり、総人口に占める65歳以上の割合も36%を超えるとされています。

少子化は国力の著しい衰退を招きます。日本にとって少子化問題の対策は文字通り「待ったなし」です。

◆民間参入を拒む保育業界

子育てと仕事を両立させたい女性にとって、出産をためらう原因の一つが「待機児童問題」であり、全国で約2万5千人の待機児童がいると言われています。

これまで、例えば小泉政権下では構造改革の一環として「待機児童ゼロ作戦」が計られ、認可保育所の設置用件の緩和を通して民間の参入を促す試みがなされましたが、規制緩和は限定的なものとなっています。

規制緩和以降も、自治体によっては条例によって独自の基準を作り、事実上、認可保育所を社会福祉法人に限定しているところが多く、まだまだ民間参入が進んでいません。

また、社会福祉法人が運営する認可保育所は、国からの補助や税制優遇によって利用料が安いのに対し、認可外になると認可保育園の3倍の額になります。(認可保育所の平均保育料は月額2万円強、無認可保育所は月額約6万円)

ちなみに横浜市では、社会福祉法人と民間の垣根をなくし、民間であっても自治体から施設整備費の補助金を出すようにした結果、企業の参入が促進され、待機児童が今年でほぼ解消されたという事例はあります。

しかし、いずれにしても、国からの補助金を当てにしないと成り立たないという基本構造は変わりません。

また、税制上でも株式会社には大きなハンディがあります。社会福祉法人は法人税、事業税、住民税、固定資産税、消費税が非課税ですが、株式会社やNPO法人は、法人税、事業税、住民税は課税されます。

ゆえに、株式会社の保育事業に対しては減税や課税免除を行い、不公平な参入障壁を排除し、民間の保育事業参入を促すべきです。

もちろん、保育の質を担保するために、監査の強化も同時に進めることは必要ですが、喫緊に必要なことは保育所の定員の増大です。

◆保育所増大に民間の力を活用せよ!

昨夏に可決した「社会保障と税の一体改革」では、消費増税分によって7千億円分の財源を投じ、認可保育所の整備をすることになっていますが、そもそも増税によって認可保育所を増やすという考えは間違っています。

必要なことは、保育業への民間の参入障壁を排除することであり、その流れの中で企業内保育所の設置を推奨すべきです。

復職を願うママさんたちの声を聞くと、最も多い答えは「職場に保育所があることが一番安心」というものです。

企業内保育所は、大企業を中心に近年増え始めていますが、全体の割合からすればまだまだ足りていません。

現実に、女性が働きやすい環境を整備している企業の多くは、生産性も高く、業績好調な企業が多いという点も見逃せません。

企業内保育所を設置する企業の法人税を優遇するなど、民間の力を有効に使えば、消費税を増税せずとも待機児童問題の解決は可能なのです。

◆人口増大で「世界のリーダー国家」を目指せ!

2007年の第一次安倍政権で初めて内閣府特命担当で少子化担当大臣が任命されましたが、この5年間で担当大臣は14人も代わっています(内、民主党政権下では9人も交代)。

その間、少子化対策に対する長期的なビジョン、目標に基づいて、腰を据えた政策が実施されて来ませんでした。

その背景には、戦後の左翼史観・自虐史観により、「政府が人口政策に関与することは戦前・戦中における『産めよ殖やせよ』政策の復活だ」として、政府が人口・家族政策に介入することに対して、日本国民が抵抗感を持っていることがあります。

確かに、政府が個人に対して出産を強要すべきではありませんが、政府が出産・子育てをしやすい環境を築いていくことは急務です。

幸福実現党は、国家目標として、人口増加策と外国人受け入れを進め、将来的に「3億人国家」を目指しています。

これは「世界のリーダー国家を目指す」という国家目標の提示であり、単なる民族主義やナショナリズムとは違います。

人口増加による国家の繁栄は、同時に「国防力」ともなり、世界に「正義を発信するための力」ともなります。

過去を振り返って現状復帰を是とするのが自民党であるならば、未来をさらに発展させ、「日本人のみならず、世界人類の幸福に責任を負わん」とする気概を有しているのが幸福実現党なのです。(HS政経塾2期生 古川裕三)

日台漁業協定調印――台湾との一層の連携強化を![HRPニュースファイル607]

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◆日台漁業協定の締結を歓迎する

4月10日、日本と台湾の両政府は、尖閣諸島周辺海域での漁業権をめぐる取り決め(実質的な「協定」)に調印しました。(4/11 東京「台湾 尖閣領土問題棚上げ 日本と漁業協定に調印」)

内容としては、日本の排他的経済水域(EEZ)内に、日台による「共同管理水域」を設け、その水域での台湾漁船の操業を正式に認めるものとなっています。

日本側が大幅に譲歩しただけに、これまで同海域での台湾漁船の不法操業に悩まされてきた沖縄の漁民からは早速、反対や不満の声が上がっています。

沖縄県の仲井真弘多知事は「頭越しとしか言いようがない。この海域はマグロの好漁場。日本の漁民の漁業機会が減り、漁獲高も大きく減少する」と不快感を表明しました。(4/13 日経「沖縄知事、日台漁業協定調印に不快感『頭越しの決定』」)

沖縄側の反応も心情的には理解できますし、沖縄の漁民が実損害を被るのならば、政府として何らかの補償も必要でしょう。

されど大局的な観点で見る限り、今回の日台漁業協定が我が国の外交戦略上、極めて重要な一手であったことは間違いありません。

◆友好国・台湾と尖閣諸島をめぐる問題

軍事大国化を進める中国との緊張が高まる中、自由と民主主義の価値観を共有し、戦略的要衝に位置する台湾との関係強化は、我が国にとって極めて重要な外交課題です。

台湾はもともと親日的な国民性で、東日本大震災の際もわずか人口2300万人の国ながら、真っ先に200億円もの義捐金を届けてくれたのは、記憶に新しいところです。

そんな日台関係ですが、最近は尖閣諸島を巡り、関係が一部ギクシャクしていたのも事実です。

特に昨年9月25日、多数の台湾漁船や抗議船が尖閣領海へ侵入して、海上デモを敢行。それを海上保安庁の巡視船が放水で阻止しようとする映像が、「台湾は親日的」というイメージを抱いていた日本国民に、少なからぬ衝撃を与えました。

そこには、台湾内でのナショナリズムの高揚に加え、若い頃から尖閣諸島の領有権を主張する「保釣運動」の熱心な活動家でもあった馬英九総統の政治スタンスが影響していたのも間違いありません。

◆周辺国との戦略的関係強化で、対中国包囲網を!

そんな台湾を自国に有利に取り込もうとしていたのが中国です。中国は台湾に向けて、尖閣領有問題に関する「対日共闘」を呼び掛け続けてきました。

このまま漁業問題で日台の関係がこじれた場合、最も喜ぶのは中国です。

今回の日台漁業協定は日本が一方的に譲歩したかに見えますが、台湾のメンツを立て、かつ実利を与えながら、中国と台湾の連携にくさびを打ち込むという、実は我が国とって極めて戦略的な協定だったと言えましょう。

ちなみに馬総統は尖閣の領有権を強く主張する一方で、「領土問題を棚上げし、資源の共同開発」を呼びかける「東シナ海平和イニシアチブ」を発表するなど、リアリストな面も併せ持っています。

馬総統は「今回の協定により、台湾の対日関係は新たな段階に入った」と歓迎の声明を発しましたが、実際、台湾は人口わずか2300万人ながら正規軍約30万人を擁し、軍事予算は約1兆円で欧米各国から最新兵器を調達している、侮れない「軍事大国」であります。

幸福実現党は、軍事的拡張を続ける中国に対抗し、「対中包囲網」を構築する上でも、価値観と利害が一致する周辺諸国との関係強化を訴え続けて来ました。

今回の日台漁業協定の締結を歓迎すると共に、大局的・戦略的観点から、今後とも周辺各国との一層の連携強化を訴えて参ります。(幸福実現党総務会長 加藤文康)