先週のニュースファイルで、9月末に大連に行き、中国海軍が密かに建造をすすめている空母(通称「ワリヤーグ」――ウクライナから購入して改装中)を視察してきたことをご報告致しました。
⇒http://www.hr-party.jp/new/2011/12148.html
中国はこの「ワリヤーグ」導入を皮切りに、2020年までに国産空母数隻を建造し、その強大化する軍事力を背景に、南沙諸島、西沙諸島、尖閣諸島といった島々の領有権確保を目指しています。
そして、それによって広大な他国の排他的経済水域の獲得を狙っています。
そんな中国の「意思」の一端が露になったのが、2010年9月に起きた尖閣諸島中国漁船衝突事件 です。
この事件で改めて日本人が驚いたことは、明らかに日本の領土である尖閣諸島(中国は1971年、この周辺の海底に地下資源が発見された直後に突然、領有権を主張しはじめました)を、中国政府のみならず、中国人の大部分が自国の領土であると声高に出張していることです(もちろん、そう中国政府が教育・宣伝しているからではありますが……)。
私たち日本人から見れば、そんな「横暴極まりない」ことを、なぜ中国は平然と主張するのでしょうか?
実は、この考えを裏付ける理論が中国共産党の「戦略的国境(戦略的辺疆)」という概念です。
「国境は、そのときの国力や国際環境によって変わる」――つまり、国境とは軍事力で変えられるという理論です。
かつてヒトラーは「国家が生存発展に必要な資源を支配下に収めることは、成長する国家の正当な権利である」と言って周辺諸国に侵攻しました。
それと全く同じ理論で、中国は今、増強する海軍力を背景に、外洋の「戦略国境」を拡大せんと行動を起こしているのです。
そうした中国の軍事力、とりわけ海軍力の中軸が「空母」ですが、実はもう一つ、中国が開発した秘密兵器があるといわれています。それが「空母キラー」といわれる新型の弾道ミサイルです。
中国共産党系の新聞『環球時報』は今年2月、中国軍が開発を進めてきた新兵器、対艦弾道ミサイル(ASBM)「東風(DF)21D」の配備を既に開始したと伝えています。
これについてはアメリカ国防省も認めており、報告書で「この対艦ミサイルは、2000km離れた地上から移動中の空母に命中させる性能があり、マッハ6~10で接近するため防御方法がとない」としています。
もし、このミサイルが実戦配備され、米空母の東シナ海への接近が阻止される事態となれば、日本の安全保障体制を根本から揺さぶられることになります。
なぜなら、そのミサイルが本当にそうした性能を有するなら、中国が台湾や尖閣諸島に侵攻した有事の際、アメリカの空母機動部隊が、中国の沿岸に近づけなくなるだけでなく、台湾や日本の港にはいることすら危険になります。
その結果、米軍の行動は、大きく制限されることになるからです。
実は、こうした「米空母機動部隊の接近阻止」こそ、現在、中国海軍が進めている戦略目標と考えて良いでしょう。
なぜなら、既にアジアにおいて、軍事的に中国に個別に対抗しうる国はもはやなく、現状で唯一、中国の軍事力を上回るのは、日米同盟によってアジアにプレセンス(存在)を維持している米軍だけだからです。
この米軍の戦力(特に空母機動部隊)さえ、アジアから排除(接近阻止)できれば、南シナ海や東シナ海の島々や資源のみならず、周辺諸国は、中国の思うがままにできるからです。その時、日本は中国の属国とならざるを得ない状況に追い込まれます。
そうした戦略の一環として、中国海軍の戦力増強はあり、また日米同盟を分断しようとするさまざまな外交活動や工作を画策しているのが、現在の中国共産党です。
日本人は一日も早く、こうした事実に眼を開かなければなりません。幸福実現党が憲法改正、そして日米同盟堅持を強く訴えている理由は、まさにここにあるのです。(文責・矢内筆勝)
[HRPニュースファイル058]中国の接近阻止戦略と日本の安全保障
10月 13th, 2011
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