◆「指導力不足」教員の実態
先日、東京の公立小学校に子供を通わせている保護者の方から悩みをお伺いする機会がありました。
今年度、子供のクラス担任になった教員があまりに指導力が無いというのです。
担任は、授業初日から、前任校との比較についてや、「モンスターペアレント」で困ったことなどを生徒に話したそうです。
そして、授業は復習にもかかわらず、進み方が遅く、説明も的を射ていない、等々。
「自分の子供は幸い、良い塾に行っているから良いものの、そうでない子はかわいそうだ」とおっしゃっていました。
◆形だけの「指導力不足」教員対策
このような教員の指導不足については、公立学校に改善を訴えても、きちんと対処してもらえないことがほとんどです。
校長に対応を求めても、よほどでない限り、注意程度で終わってしまい、降格・懲戒処分や教員交代、人事異動等の対応は取られません。
学校という「閉じられた空間」の中で、最近ようやく、「いじめ」や「体罰」隠蔽問題については、社会の耳目を集め始めましたが、「教員の指導力不足」問題については、依然、深い闇の中にあります。
文科省では、こうした問題解決に向け、2000年以降、指導力不足教員対策として、教育委員会に指導力不足教員の認定と研修を進めてきました。
しかし、明確に「指導力不足」と認定された人数は2010年度で208人しかいません。一番ピークと発表された2004年度でも566人と、驚くほど少ない数字しか発表されていません。
その背景には、指導力不足教員の認定基準が各教育委員会の裁量に委ねられていること、並びに「いじめ」や「体罰」と同様、学校側に隠蔽したいという思惑が見え隠れします。
しかし、実際に、どうしようもない授業しか行わない教員が多数いるのは事実であり、運悪く「指導力不足」教員に当たった生徒や保護者は「とにかくすぐに替えてほしい」というのが本音です。
生徒や保護者にとっては、そうした教員の授業時間が無駄であるのみならず、間違った教育内容を教えられてしまうのではないかという恐怖さえあります。
現在、「指導力不足」教員が、大きな国家的損失を生んでいる可能性すらあります。
◆都市部に多い「指導力不足」教員
また、このような「指導力不足」教員の発生は、特に都市部で起こりやすいと考えられます。
それは、毎年行われる教員採用試験の倍率が大都市圏ほど低く、質の低下が起こりやすいからです。
例えば、2013年度の小学校教員の採用試験の倍率は、青森県16.3倍、岩手9.3倍、鹿児島県11.1倍であるのに対し、埼玉県3.2倍、千葉県2.6倍、東京都4.1倍と、地方に比べて都市部ほど低倍率傾向が続いています。
見方はいろいろありますが、こうした公立学校教員の質の低下が、大都市圏において、塾や私学人気をさらに後押ししているのは事実でしょう。
◆規制緩和で「私学・私塾」の活性化を図れ!
自民党の公立学校教改革案では、まずは教員希望者に「准免許」を与えて学校に配属し、数年の試用期間を経た上で「本免許」を与えることとし、指導力不足が判明した場合は、受け入れた教委が研修などを実施するとしています。(4/14 毎日「教員制度改革:『試用』3〜5年 新卒は准免許 自民検討」)
自動車運転免許のように、「仮免」から「本免許」へと段階を踏むことで、不適格教員をふるい落とすことがねらいですが、採用後、3~5年間の「仮免」教員が増えれば、教員の人件費はますます増大します。
むしろ、大都市圏では、塾を学校として認可する「規制緩和」を行ったり、私学に入りやすいように「バウチャー」(クーポン)を保護者に支給するほうが、問題ある公立学校の再建に大量の税金を投入するよりも遥かに効率的、効果的と考えます。
また、私学や私塾のほうがバリエーションある教育内容に意欲的に取り組める土台があるため、本当の意味で、生徒一人ひとりに合わせた多様な選択肢が保障されることにもなります。
私見ですが、現在の子供たちや20代の若者を見ていて、一定の割合で飛び抜けて優秀な人材が多くいると感じます。
明治維新期には「松下村塾」をはじめ、「私学・私塾」が突出した人材を輩出するインキュベーター(孵卵器)となりました。
日本から「世界のリーダー」を輩出していくためにも、政治家は勇気を持って学校制度の在り方を大胆に見直し、私学・私塾の活性化を図るべきです。(文責・宮城県第4区選挙区支部長 村上善昭)
形だけの「指導力不足」教員対策――規制緩和で、私学・私塾の活性化を![HRPニュースファイル629]
5月 6th, 2013
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