◇株価リーマン・ショック後最高値更新
日経平均株価は、2008年9月30日以来約4年5ヶ月ぶりに1万1500円まで回復し、リーマン・ショック後最高値を更新しました。世間では、引き続き「バブル」だとする論調も目立ちますが、順調な回復過程にあるだけであり、一喜一憂する必要はありません。
国内外の投資家が、順調に円が安くなっていることと次期日銀総裁が金融緩和論者という見通しも出ていることが円売り材料となっているのでしょう。
さて、気になる日銀総裁人事は以下の通り4人に絞られた模様です。
岩田一政・日本経済研究センター理事長(元日銀副総裁)、岩田規久男・学習院大学教授、黒田東彦・アジア開発銀行総裁、伊藤隆敏・東大教授の4氏(読売新聞2月20日)。
岩田一政氏は、日銀副総裁を経験しているだけではなく、デフレ脱却に関しては長期国債の残存期間が長い国債の購入を主張。白川方明日銀総裁よりも積極的な金融緩和を主張すると思われます。地味で典型的な学者肌である同氏の個性は、著書『デフレとの闘い』でも余すところなくにじみ出ていますし、実務面では同氏が一歩リードとしていると言えるでしょう。
岩田規久男氏は、かねてから日銀批判の急先鋒として活躍してきた学者です。最新刊『日本銀行 デフレの番人』(日経プレミアム)をはじめとして関連著書も多く、リフレ派の代表的論客でもあります。特に、経済成長による税収増の効果を強調していますし、4人の中では最も急進的な日銀改革論者が同教授です。同氏と浜田宏一氏がタッグを組んだ場合、日銀法改正はかなりの前進となるでしょう。
伊藤隆敏氏は、国際的にも知名度が高い学者で、インフレ目標政策が持論です。内閣官房参与の浜田宏一氏も絶賛している学者の一人であり、毎回日銀総裁候補に挙がっています。
最後に、黒田東彦氏は元財務官僚ですので、金融緩和というよりも為替介入や外債購入を好むタイプです。ただ、安倍首相の金融緩和路線は踏襲されることでしょう。黒田氏の場合は、財務省と日銀の間で行われる日銀総裁「たすき掛け人事」のケースに当たり、日銀出身の白川氏の次は財務省出身の黒田氏が最優力だとも言われていたのはこうした理由からです。
いずれにしても、今回安倍首相が選出した日銀総裁候補はどれもアベノミクスを体現する見解を持っているため、投資家が期待を膨らませたのでしょう。
◇2014年4月以降の増税ショックにどう対応する
アベノミクスが功を奏して名目GDPが3%以上を達成した場合、消費税増税が2014年4月に5%から8%へと上昇することになります。その1年半後には、10%へと上がります。
2014年4月の時点ならば、まだまだ景気は回復途中であり、たとえ経済指標が揃ったといっても増税による悪影響は避けられません。つまり、数値だけは上向きとなっても、中小零細企業の経営や大卒の就職率などは依然として厳しいままである可能性が高いということです。また、デフレによって低下している平均所得が数年で回復するのは至難の業です。
さらに、規模が小さいとは言え復興増税が始まっています。今後は富裕層増税も加わり、日本経済には「増税ラッシュ」がやってきます。増税が景気回復に冷水を浴びせることになれば、元の木阿弥です。
増税による経済縮小の効果は、早ければ3ヶ月以内に出てきます。増税は、景気回復をする上での重い十字架となるのは必至です。新しい日銀総裁は、増税による経済のマイナスショックを和らげるためにどこまで金融緩和を続けられるかが腕の見せどころとなります。あとは、就任後に日銀内部からのゼロ金利の早期解除といった金融引き締め圧力をどうハンドリングしていくかも課題となるでしょう。
◇実体ある景気回復を目指して
現在の金融緩和は、株価上昇という即効薬にはなっています。ただし、実体ある景気回復をもたらすまでには長い時間を要します。例えば、庶民が「景気が良くなった」と実感できる状態と定義しましょう。給料が上がる、食卓に一品が増える、お父さんのお小遣いが増えるなど、日常生活に明確な変化が現れてくると考えてもらって結構です。
そのためには、どうしても増税法案が邪魔になります。いくら増税が自公民三党合意による既定路線とはいえ、最後は政治家が判断をすればいくらでも覆すことができます。実際、みんなの党や日本維新の会には減税論者がいます。まだまだ希望は捨てたものではありませんし、幸福実現党が次の参院選で議席を取ることで、増税法案を中止に弾みがつきます。
上記のように、財務省による増税路線はまだまだ雪解けには遠いですが、日銀の改革は良い方向に向かい始めています。新しい日銀総裁には、どうか不退転の決意で日銀改革と日本経済再生に取り組んで頂きたいと願う次第です。(幸福実現党参院選静岡選挙区代表:中野雄太)
どうなる日銀新総裁人事?課題は増税ショックの対処[HRPニュースファイル555]
2月 20th, 2013
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