[HRPニュースファイル324]ロシア首相が北方領土再訪問。どうなる日露関係

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ロシアのメドベージェフ首相が大統領時代の2010年以来二回目の国後島訪問をしました。同首相は、「一寸たりとも領土は渡さない」をはじめとして、日本を挑発するかのような発言を連発しており、かなり強気の姿勢を示しています。

択捉島への訪問は天候不順で中止になったとは言え、北方領土問題を抱える日露関係悪化の懸念が再燃してきました。

今回は、北方領土問題を題材に日露外交を考えていきます。

【論点1】歴史的経緯から見た日露間の領土問題

北方領土問題を理解するために、簡単に歴史をおさらいしておきましょう。詳細は外務省のHPでも確認できます。→http://bit.ly/MTxuaZ

実は、日本はロシアよりも先に北方領土を発見しており、19世紀には実効的支配をしています。その後、ロシア側も択捉の隣にあるウルップ島を南限として認識していました。

両国は1855年に日露通商条約を結び、両国が認識する国境をそのまま確認しています。

1875年の樺太千島交換条約では、千島列島(占守島からウルップ島までの18島)をロシアから譲り受ける代わりに、ロシアに対して樺太半島を放棄。日露戦争後のポーツマス条約では、ロシアから樺太の北緯50度以南の部分を譲り受けています。

問題は、戦後以後の歴史です。

実は、第二次世界大戦におけるソ連は問題児でした。例えば、わが国とは1945年8月に日ソ不可侵条約を破棄して宣戦布告し、満州を侵略しています。終戦後もソ連との戦争は続きました。

8月17日から18日にかけては、千島列島最東端の占守島(シュムシュと読む)をソ連軍が突如侵略。武装解除をしていたわが国陸軍は、突如の侵略に苦戦しましたが、当時精鋭部隊と呼ばれた陸軍の戦車第十一連隊の活躍などにより、内容は勝っていたようです。

ソ連政府機関紙のイズベスチア誌は、「8月19日は、ソ連人民悲しみの日であり、喪の日である」と言及していることから、日本軍の善戦の様子が分かります。

結局、日本は停戦=降伏となりましたが、日本軍の強さがソ連の千島列島から北海道、場合によっては東北の占領を防いだわけです(一説には、日露戦争敗戦によるスターリンの怨念が引き起こした侵略行為だと言われている)。

残念ながら、地元の北海道をはじめとして、占守島決戦を教える教師は少ないようですが、日本人なら心に留めておくべきでしょう。

【論点2】ロシアとの交渉は甘くない

前述の占守島決戦後、ソ連は一方的に千島列島を自国領に編入しました。1951年のサンフランシスコ平和条約では、日本は千島列島に対する全ての権限及び請求権を放棄していますが、問題となっている北方四島は含まれていません。

加えて、特筆すべき論点は、サンフランシスコ平和条約に、ソ連が署名を拒否していることです。

そのため、わが国は、1956年に「日ソ共同宣言」を調印し、両国間の外交は再開しました。同共同宣言では、歯舞諸島と色丹はわが国に返還することになっていたのです(いわゆる2島返還要求)。

プーチン大統領自身も「2島引き渡しが軸」と考えています。(5/7 産経「「2島引き渡し」が軸 北方領土問題、大胆な譲歩は困難」⇒http://bit.ly/LwWsgd

上記の記事にもある通り、プーチン大統領は「領土問題を最終決着させたい」という意思は持っており、日ソ共同宣言が現在も有効と考えています。

ロシア政府内では、メドベージェフ首相による強固路線が先鋭化しているように見えますが、北方領土返還交渉は今後も2島返還が基盤となることは変わりありません。その意味で、新大統領の間にどれだけの交渉ができるかがカギです。

ただ、プーチン氏の大統領再任の際に明らかになったように、国内の支持基盤は強くはありません。加えて、メドベージェフ首相をはじめとした強固路線派もいるため、ロシア政府が大胆に返還交渉に出ることは難しいと言えるでしょう。

そして、歴史を見る限り、ロシアとの交渉は甘くはないことは肝に銘じるべきです。

【論点3】日露通商の強化がカギか

幸福実現党としては、領土問題に関して前提としているのが、日露通商交渉を強化です。原発問題により、資源外交を余儀なくされている日本は、ロシアの天然ガスやその他の天然資源は必要になります。

同時に、ロシア側としては、日本の優れた技術と資金力が欲しいという面もあるでしょう。親日派と呼ばれるプーチン大統領時ならば、ロシアとの通商交渉を強化していくのは一つの対策です。

その上で、日ソ共同宣言の精神に従ってまずは2島返還を実現する。残りの2島を返還できるかどうかは、今後の日ロ関係の成熟次第だとも言えるでしょう。

日本は、ロシアとの関係を強化する上では「大人の態度」が必要です。「親日派」と呼ばれるプーチン大統領を過大評価することなく、資源外交や経済協力を推し進めなければなりません。

日本政府は、単にメドベージェフ首相の訪問を抗議するだけではなく、中長期的な視点で領土問題解決をしていくのがベターだと言えます。(文責・中野雄太)


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