[HRPニュースファイル321]イランのロジックに学ぶ「原発が持つ国防上の意義」

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核開発疑惑がくすぶるイランに対する経済制裁網が一段と狭まってきました。

6月28日にはアメリカでイラン制裁法が発効。これで大統領の判断があれば、アメリカはイランの中央銀行と取引を行う金融機関に対して、制裁を課すことが可能となりました。(6/28 NHK「米 対イラン制裁が発動可能に」⇒http://goo.gl/4ovPV

また、本日7月1日から、EUはイラン産石油の完全禁輸を行います。(7/1 NHK「EU イラン産原油の禁輸措置発動へ」⇒http://goo.gl/Rqiai

たび重なる制裁措置で、イランはインフレや通貨の下落といった経済問題に見舞われていますが、核開発を放棄する気はないようです。

アメリカの研究機関によれば、イランは核兵器1個分に必要な濃縮ウランを、最短4ヶ月で作れるだけの設備を持っているようです。

国連安保理の常任理事国にドイツを加えた6カ国も、イランとの交渉を行っていますが、物別れに終わっています。

6月19日のモスクワでの会合でも、6カ国側は核兵器開発が容易になる20%のウラン濃縮を止めるよう働きかけましたが、イラン側は拒否。次回の交渉は、政治家から専門家に参加者のレベルを下げて、3日にイスタンブールで行われます。

このように、今のところは外交を通じて妥協点を探る動きが続いていますが、一連の交渉が完全に破談に終われば、核開発を阻止したいイスラエルがイラン核施設の攻撃に踏み込む可能性も出てきます。

なぜイランはこれほどの執念で、核開発を続けようとするのでしょうか?

実は現在のところ、イランが核兵器そのものを持とうと決めたのか否かは分かっておりません。

イランが核兵器を作る際には、最高指導者であるハメネイ師が決定をくだすことになっているようですが、アメリカの諜報機関は、彼はまだその決定を行っていないと見ています。

では、イランが必死で手にしようとしているものとは何なのか。それは、やろうと決めれば短時間で核兵器が製造できる技術的な「能力(capability)」なのです。

核兵器そのものを持たなくとも、「抑止力」は短期間で核兵器と搭載用のミサイルなどを作る能力を持った段階で作用し始めます。

イランがこうした能力を保有すれば、諸外国が追い詰め過ぎると、イランは核兵器を実際に作り始める可能性があります。

つまり、アメリカやイスラエルがイランに対して今のような強い姿勢を取れなくなると同時に、核を持たない周辺国もより大人しくなり、外交の舞台で優位に立てるというのが、イラン側の読みなのです。

「イランを見習え」とは言いませんが、こうした抑止力についての考え方は、日本にとって「原発が持つ国防上の意義」について考える機会となります。

日本がどのくらいのスピードで核兵器を製造できるのかには諸説ありますが、90日という数字を挙げる人もいます。

日本が自力で核兵器を持つことなど考えられないという人も多いでしょうが、先ほどのイランの例で言えば、ここで問題なのは「核兵器」そのものではなく、「核をすぐに作れる能力」の保持なのです。

つまり、中国や北朝鮮といった軍事力の拡張にいそしむ専制国家は潜在的な脅威ですが、今後もし日本がこうした国々に脅されるようなことがあっても、日本には「核兵器開発に踏み切る」という「最後のカード」が残されています。

すなわち、日本が「原発技術」を有しているということは、日本に危害を加えようとする国にとっては、大きなプレッシャーを与えています。

「原発を全て廃棄する」ということは、核兵器を持つ能力を将来にわたって捨て去るということです。なぜなら、技術は単純に保存することはできず、産業を維持することが必須だからです。

一度失われた技術は、簡単には取り戻せません。例えば、戦前、航空機大国だった日本が戦後、GHQによって航空機の研究・設計・製造を全面禁止されて以降、現代に至るも航空機製造技術は世界に遅れを取っています。

福島の事故以降、「脱原発」の声が大きくなりましたし、「原発でひとたび事故があれば、子どもたちの将来はどうなるのだ」という不安も理解できます。

しかし、子どもたちの将来を真剣に思うのであれば、国防のことも綿密に考える必要があります。感情的に「原発危ない」と訴える前に、こうした原発の持つ国防上の意義、抑止力効果についても議論を深めておくべきではないでしょうか。

「核兵器が必要だ」という世論が今は盛り上がっていなくても、日本を取り巻く国際的な環境は変化していくことも忘れてはなりません。

中国や北朝鮮のように、大規模な軍隊やミサイルなどで周囲を威嚇する国々と隣り合う中で、「将来的に核を保有する」という選択肢を本当に捨て去って良いのか。それで日本は将来も本当に安全なのか。それはこの国の将来を左右する重大な決定です。

原発問題は国防問題でもあります。日本の「脱原発」を最も願っているのは、どこの国かを考えるべきです。

タイムリーな「イラン問題」を切り口に、原発問題を国防上の視点から考えてみましたが、幸福実現党は、日本の安全、すなわち、国民の皆様の命を守ることを真剣に考え、全力を挙げて取り組んでいます。

私達は日本がもう一度、力強く繁栄の道を歩み、世界のモデルとなるような国になることを心から願っています。

そのためにはまず、「この国をいかに守るか」という点について、文字通りあらゆる角度から考え抜かねばなりません。核の抑止力について議論を深めることも、避けては通れないテーマの一つであると考えます。(文責・政務調査会 研究員 呉 亮錫)


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